著者
田中 十志也
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.128, no.4, pp.225-230, 2006 (Released:2006-10-13)
参考文献数
21

肥満,インスリン抵抗性,高脂血症,高血圧といった動脈硬化のリスクファクターが一個人に集積するメタボリックシンドロームを呈する患者が急増している.とりわけ肥満に伴う脂肪細胞の機能異常がメタボリックシンドロームの発症に深く関わっていることから,適度な運動やカロリー摂取制限が有効な治療法の一つである.我々は,持続的な運動時あるいはカロリー摂取制限時に骨格筋で誘導される転写因子に着目して研究している中で,リガンド依存的に遺伝子発現を制御する核内受容体の一つperoxisome proliferator-activated receptorδ(PPARδ)が誘導されることを見いだした.そこで,PPARδの合成アゴニストGW501516を用いてDNAマイクロアレイ解析による標的遺伝子の同定を行ったところ,PPARδは骨格筋の脂肪酸取り込み,輸送,酸化,および脱共役タンパクといった脂肪酸代謝を調節する因子であることが明らかとなった.また,PPARδアゴニストは高脂肪食負荷および遺伝的に肥満を呈するマウスモデルにおいて抗肥満およびインスリン抵抗性改善効果を発揮することが明らかとなった.さらに,PPARδアゴニストは肥満動物の脂肪組織においてNADPHオキシダーゼ経路による酸化ストレスの産生を抑制することによってTNFαやIL-6といった末梢組織のインスリン抵抗性を惹起するアディポサイトカインの産生異常を改善することが明らかとなった.以上のことから,PPARδアゴニストは単剤で肥満,インスリン抵抗性,および高脂血症に対して治療効果を発揮する画期的なメタボリックシンドローム治療薬として期待される.

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (22 users, 22 posts, 13 favorites)

PPARδ作動薬ってかなり夢の薬らしい https://t.co/q9Q1k0oaKc 遺伝子発現を制御するのって直感的には少々おっかないけど。
9 9 https://t.co/r46gAo0H1D
PPARD経路(脂肪代謝調節因子) https://t.co/StAQXQ9ZVO 糖尿病治療やメタボ対策に有効らしくて研究進んでる。 運動時に糖を燃やすと脳が使うぶんがなくなって困るから糖から脂肪へスイッチ。活性化で有酸素運動時の耐久性を上げるとかそんな作用のようだ

収集済み URL リスト