著者
田中 秀和
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.142, no.3, pp.112-115, 2013 (Released:2013-09-10)
参考文献数
28

脳を治療するための薬物は,従来神経伝達物質に関連するものが主であった.現在はそれらに加えて,神経変性疾患のメカニズム解明をもとにした治療法の開発や,喪失した細胞を補充することを目指した再生医学的アプローチも盛んになっている.今後はさらに,シナプス病といった概念の発展により,神経回路の構築そのものが,あらたな治療標的を探索する対象となっていくかもしれない.近年シナプス前後の細胞間認識に関わる接着分子や,その他のタイプのシナプス形成に関わる分子が,自閉症などの疾患に関連することが示されている.うつ病においても海馬が萎縮し,逆に治療により拡大することなどから,海馬神経回路の機能や構造が変化する可能性がある.海馬神経回路リモデリングを担う分子の一例として,プロトカドヘリン型の接着分子arcadlinが知られている.arcadlinは即効性に抗うつ効果を示す電気けいれんにより誘導されるばかりでなく,遅効性の抗うつ薬の慢性投与後にも誘導される.またうつ病患者の海馬において増加する脱リン酸化酵素MKP-1と,拮抗する関係にあるp38 MAPキナーゼがarcadlinによって活性化することからも,arcadlinとそのシグナル伝達系による海馬シナプスリモデリングのメカニズムは,うつ病の治療効果に関与する可能性が期待される.

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前シナプスと後シナプスの情報連絡は神経伝達物質だけじゃなくカドヘリンなどの細胞接着分子も担っている.これをターゲットした新薬も将来でる? 『シナプス構造はうつ病治療の標的となるか?』 抗うつ治療によって海馬神経回路シナプスのリモデリングが起きる可能性 https://t.co/ih2ICapsAi

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