著者
井川 雅子
出版者
一般社団法人 日本顎関節学会
雑誌
日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.44-50, 2018-04-20 (Released:2018-05-14)
参考文献数
17

2014年に発表されたDiagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders(DC/TMD)には「顎関節症による頭痛」が含まれており,顎関節症専門医が本頭痛の診断と治療をすることが期待されている。しかしながら,実際に診断を行おうとした場合,頭痛の非専門医である歯科医師にとって最も困難な作業は,診断決定樹や診断基準の最後に記されている,他の頭痛との鑑別であろう。顎関節症による頭痛と鑑別が必要な頭痛は多数あるが,本稿では,歯科医師の盲点となりやすい「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛:Medication-overuse headache:MOH)」について解説する。MOHは片頭痛あるいは緊張型頭痛を基礎疾患に有する,いわゆる「頭痛もち」の人が,急性期頭痛薬(鎮痛薬など)を頻回に服用することにより,慢性的に頭痛を呈するようになった状態である。頭痛は明け方,起き抜け時から生じ,締めつけられるような痛みや頭重感が毎日続き,顔面に痛みが拡大した場合は筋性の顎関節症,すなわち「顎関節症による頭痛」のようにみえることがある。薬に耐性が生じるため,原因薬物である鎮痛薬を服用しても頭痛は改善しない。3か月を超えて月15日以上頭痛がある人々の約半数はMOHであるため,該当する場合は鎮痛薬の使用状況を詳細に問診する必要がある。起因薬剤として,最も多いのは市販の鎮痛薬であり,次いで医療機関で処方される非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)が多い。治療は,①原因薬物の中止,②薬剤投与中止後に生じる反跳頭痛に対する治療,③頭痛の予防薬投与の3点が中心となる。「顎関節症による頭痛」にMOHが併存する場合は,本疾患の経験が豊富な頭痛専門医と連携して治療を行う必要がある。

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20/100 『顎関節症と頭痛~顎関節症専門医~』 ✅緊張型頭痛 特徴のオーバラップが多い ✅片頭痛 三叉神経・自律神経性頭痛と併存しやすい ✅薬物乱用頭痛 締め付け様痛や頭重感、顔面痛まで拡大した場合「顎関節症による頭痛」に見える https://t.co/CJTAtTEqze https://t.co/bYD3O0r31Q

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