著者
松下 哲
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.91-95, 2001-01-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
28

高齢者の終末医療では生命, 人間, 老化, 死に対する考え方が反映され, 実践される医療の質が問われる. 国民からみた現代医療は社会にとって大きい存在, 特異な亜文化, 高い統一性, イデオロギー性があり, 無益な治療つまり誤った技術の用い方が問われている. これは医学が客観性「もの」を追う科学の仲間入りをし, 進歩を遂げる条件として「こころ」を放棄したことに由来している. 故にこころの扱いが中心となる終末医療では問題が顕わとなる. 終末医療は文化全体と整合する道, こころを中心においた Art of Dying を探らなければならない. それは生, 老, 死に関する生命科学の進歩と生命観の発達を基とし, インフォームド・コンセントを中核とする緩和医療にほかならない. 天寿がんはこれらを具現する概念の一つであり, これを目標として Art of Dying が拡がる. 実践にあたっては高齢者にふさわしい理念から実際のケアに亘るガイドライン, 教育が求められる. 緩和医療の時期は不可逆的になったときから, また治療が尊厳を損ねるようになる時点からである. 高齢者は自ら医療やケアの改善を求める力がないことが多く, 家族も身近に死を経験するまではその良し悪しを判断しにくい. 医療やケアの情報を分かりやすく公開し, 緩和医療が高齢者と家族から選択されるよう推進する必要がある.

言及状況

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近代内科学の祖オスラーは 「高齢者の肺炎はいかようにも救命し難いものであり, また安らかな死をもたらすクロロフォ ルムのようなものである」 として 「肺炎は高齢者の友である」と結論した. https://t.co/9ND54P1rya

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