著者
松本 繁樹
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.630-642, 1965-10-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
4

筆者は中部地方建設局磐田工事事務所保管の資料をもとに,大井川下流部 (0~23km) 問における最近の河床変動の実態を検討し,ついでこれと砂利採取との関係について考察を加え,さらに今後の採取可能量にまで論及したが,それらを要約するとつぎのようになる. 1) 大井川下流部の1963年度の平均河床高を,1955年度のそれと比較してみると,全ての区間での河床低下が認められ,低下量の最大は73.6cm, 最小は1.6cm, 全区間の平均では33.5cmとなる. 2) つぎに総土砂変動量から河床の変動をみると, 1958および1961の両年度で堆積となった以外は,全ての年度で洗掘を示し, 1958年度以降6年間の総計では,差引約370万m3の洗掘という結果になる. 3) 大井川下流部での砂利採取は,近年急激な勢で増加していて, 1958年度以降1963年度までの採取許可量は,合計約320万m3にのぼり,その推定採取量では640万m3ないしはそれ以上に達するものとみられる. 4) 一方,同じ6年間の川自身による堆積量を逆算してみると,約270万m3となるが,この値は先の砂利採取量の2分ノ1以下にしかすぎない. つぎに上記の資料をもとに, 1kmの区間毎の土砂変動量(洗掘量)洗掘量と砂利採取量との関係を吟味してみると,両者には一部の区間を除いて,かなりの相関が認められ(相関係数r=0,602), その関係はy=0.351x+13.92なる式をもって表わすことができる,また砂利採取量のみから算定した河床低下量と実測による低下量との問にも,ほぼ類似したかなりの相関が示され(r=0.635), その関係はy=0.469 x+5.48という式で表わすことができる. 8) 下流部河床内における1963年度末現在の砂利の採取可能量は,約850万m3と計算されているが,実際にはこれにさらに上流からの流入土砂量(年間約70万m3ないしは45m3)を加算しなけれぼならない。しかし,今後の砂利採取量を現在とほぼ同一である(実質採取量で年間約200万m3)と仮定しても,大井川下流部での砂利採取は,この先10年を待たずして,全面的な禁止を余儀なくされるものと考えられる.

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