著者
氷見山 幸夫
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.63-75, 1994-06-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
29
被引用文献数
3 3

IGBP (地球圏-生物圏国際協同研究計画)とHDP (地球環境変化の人間次元研究計画)は1993年はじめに共同で,土地利用・被覆変化研究 (LUCC) のためのコアプロジェクト計画委員会 (CPPC) を設置した。 CPPCは1994年秋までにLUCCコアプロジェクトの最終案をまとめることになっており,これに沿った研究計画が1995年から世界各地でスタートする見込みである。土地利用研究の実績と経済力をもつ我国の貢献に対する国際的な期待は,当然ながら極めて高い。そこで,我国においてどのようなLUCCプロジェクトを計画すべきか,大いに議論を深める必要がある。本稿はその基礎となる諸事項を整理・検討し,我国におけるLUCCのありかたを論ずるものである。 第2章では,LUCCに関する国内におけるこれまでの主な動きを整理している。特筆されるのは, IGBP-JAPANには既に土地利用小委員会が設けられており, LUCCに対する体制を整えつつあるということ,それに1990~1992年度に行われた文部省重点領域研究「近代化と環境変化」をはじめとする諸研究において, LUCCにつながる研究実績が相当蓄積されている,ということである。 第3章では,LUCCに関するIGBP, HDP, それにCPPCの考え方を検討している。主な問題点としては, ア) CPPCの立場はかなりIGBPに偏っており,人間次元の扱いが不十分である, イ)土地利用・被覆を人間環境の重要な要素とする認識が弱い, ウ)モデルが極端に重視されており,実態把握やデータ整備に対する認識が甘い, エ)ナショナル・プロジェクトの指針や国際的研究ネットワークのあり方等,実際的行動計画に関する要点が詰められていない,などがあげられる。 我国としては,問題点の是正をCPPCに対して求めるとともに,真に意味のある成果を生み出し得る研究計画を独自に立て,世界のLUCCプロジェクトをリードする気概をもつべきである。第4章はそれに向けての具体的な提案である。日本の場合,日本を含む東アジアを重点研究地域とし,土地利用・被覆変化の詳細な調査・分析とデータベース作成,モデル化等を行う。また環太平洋地域を準重点地域と位置付け,日本との関係を軸とした研究を組織的に行う。その他の地域についての研究は,重点地域を国際的コンテクストの中で理解するのに有用なケーススタディにとどめる。

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