著者
西川 治 田村 俊和 太田 勇 新井 正 氷見山 幸夫 野上 道男
出版者
立正大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

本総括班の主たる任務は、本研究の領域全体にわたる研究推進上の企画と運営、および各班間の連絡と調整、ならびに研究成果の公表等にある。平成5年度の具体的事項を以下に示す。1.総括班会議を1回、計画研究班長会議を6回開催して、研究成果のまとめ方と公開の方法について検討した。2.本年度行ったシンポジウムは次のとおりである(予定のものを含む)。(1)第5回公開シンポジウム「GIS教育(ワークショップ)」(於 慶應義塾大学)1993年5月15日講演者数6名、参加者約100名。(2)第6回公開シンポジウム「数値地図と環境」(於 東京都立大学)1993年7月7日講演者数7名、参加者約120名。(3)第7回公開シンポジウム「地域環境変化と地理処理システム」(於 慶應義塾大学・明治大学)1994年4月3〜5日(予定)3.本年度発光した印刷物は次のとおりである。(1)NCGIAのCoreCurricilumより、GIS技術論を翻訳し(383頁)、1993年5月に刊行した。(2)本重点領域研究の研究成果総括報告書(195頁)を1993年10月に刊行した。(3)GIS技術資料のNo.3とNo.4(合本で123頁)を1994年3月に刊行した。(4)研究成果をまとめたCD-ROM(2巻)を1994年3月に完成・配布を開始した。4.本重点領域研究の成果をもとにまとめたアトラス「日本の近代化と環境変化」の執筆と編集を行なった。刊行は1994年6月の予定である。加えて、研究成果に関する概説書の編集を行なっている。5.本研究の成果を踏まえて、IGBPの第7領域との関連をもたせた次期研究計画の策定を行なっている。
著者
氷見山 幸夫 春山 成子 土居 晴洋 木本 浩一 元木 靖 季 増民 季 増民
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

アジアにおける持続可能な土地利用の形成に向け、日本、中国、インド、極東ロシア、フィリピン、タイ、インドネシア、ミャンマーで広域の土地利用変化データファイル(オリジナル電子地図、多数の現地写真等)を作成し、土地利用の現況と変化及び関連する諸問題を明らかにした。その成果はSLUAS英文成果報告他多くの雑誌・文献等で公刊した。また国際地理学連合、日本学術会議、日本地球惑星科学連合などと連携してアジア各地と国内で多くのシンポジウム等を主催・共催・後援し、研究成果を発信し、持続可能な土地利用に関する理解の向上に貢献した。東日本大震災発災後は土地利用持続可能性の観点から深く関わり、学術会議提言に寄与した。
著者
氷見山 幸夫
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.63-75, 1994-06-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
29
被引用文献数
3 3

IGBP (地球圏-生物圏国際協同研究計画)とHDP (地球環境変化の人間次元研究計画)は1993年はじめに共同で,土地利用・被覆変化研究 (LUCC) のためのコアプロジェクト計画委員会 (CPPC) を設置した。 CPPCは1994年秋までにLUCCコアプロジェクトの最終案をまとめることになっており,これに沿った研究計画が1995年から世界各地でスタートする見込みである。土地利用研究の実績と経済力をもつ我国の貢献に対する国際的な期待は,当然ながら極めて高い。そこで,我国においてどのようなLUCCプロジェクトを計画すべきか,大いに議論を深める必要がある。本稿はその基礎となる諸事項を整理・検討し,我国におけるLUCCのありかたを論ずるものである。 第2章では,LUCCに関する国内におけるこれまでの主な動きを整理している。特筆されるのは, IGBP-JAPANには既に土地利用小委員会が設けられており, LUCCに対する体制を整えつつあるということ,それに1990~1992年度に行われた文部省重点領域研究「近代化と環境変化」をはじめとする諸研究において, LUCCにつながる研究実績が相当蓄積されている,ということである。 第3章では,LUCCに関するIGBP, HDP, それにCPPCの考え方を検討している。主な問題点としては, ア) CPPCの立場はかなりIGBPに偏っており,人間次元の扱いが不十分である, イ)土地利用・被覆を人間環境の重要な要素とする認識が弱い, ウ)モデルが極端に重視されており,実態把握やデータ整備に対する認識が甘い, エ)ナショナル・プロジェクトの指針や国際的研究ネットワークのあり方等,実際的行動計画に関する要点が詰められていない,などがあげられる。 我国としては,問題点の是正をCPPCに対して求めるとともに,真に意味のある成果を生み出し得る研究計画を独自に立て,世界のLUCCプロジェクトをリードする気概をもつべきである。第4章はそれに向けての具体的な提案である。日本の場合,日本を含む東アジアを重点研究地域とし,土地利用・被覆変化の詳細な調査・分析とデータベース作成,モデル化等を行う。また環太平洋地域を準重点地域と位置付け,日本との関係を軸とした研究を組織的に行う。その他の地域についての研究は,重点地域を国際的コンテクストの中で理解するのに有用なケーススタディにとどめる。
著者
氷見山 幸夫 実 清隆
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.99-110, 1988-05-31 (Released:2008-12-25)
参考文献数
67
被引用文献数
1 1

土地利用は地理学の重要なテーマの一つであり,研究の歴史も古い。しかし,本邦の地理学界においては,それは都市地理学や農村地理学等に付随して扱われることが多く,土地利用学としての発展は遅れていた。また土地利用が他分野で扱われる機会が増え,拡散しまとまりを欠く事態となり,関連研究の集約・整理と,より良い国土利用を目指しての研究の方向づけと振興が求められていた。そうした背景の下で, 1985年10月に日本地理学会に土地利用研究グループが設置され,更に1987年8月には国際地理学連合主催・日本地理学会後援の土地利用国際会議が旭川・札幌で開催され,多大の成果をあげた。本稿はこれらの成果を基に,本邦における1980年代の土地利用研究を概観し,各研究課題の位置付けと問題点を明らかにし,今後の研究のあるべき方向を提示するものである。
著者
氷見山 幸夫
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.124-134, 1984-10-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
11

任意の事象の分布に対して格子系(grid system)を測定や表現の基準として用いる場合,可変単位の問題 (modifiable unit problem) として知られる一群の問題に遭遇する。これらは格子単位 (unit cell) の大きさや形に関するものと,格子系をかぶせる際の位置に関するものに大別されるが,このうち後者に対する取り組みはこれまで遅れていた。空間単位としての格子系の利用が一般化している今日,これを単に経験的判断により処理するのではなく,統計学的に検討することが急がれている。そこで,格子系の位置に関わる諸々の問題を「格子変位の問題」 (problem of the shifted grid) と呼ぶことにし,体系的解明をはかってゆきたい。今回はその一つとして,格子図 (grid map) のパターンに内在する不確定性の問題を取り上げる。 ある単一の事象の分布を,2種の格子単位からなる格子図で表現する場合を想定する。ここで,事象の見出される格子単位を正の格子単位,残りを負の格子単位とする。この正の格子単位の分布のパターンが,格子系の置き方によって変化する度合いをそのパターンの不確定性の指標とし,簡単な事例について検討する。 いま格子図上に,縦方向に勉個,横方向にn個の,正の格子単位m×n個からなる箱型コロニー・があるとする。このパターンが格子系を横方向に半格子長ずらすときに変化しない確率をP (m, n, p) とする。ただし,ここでpは,考えている格子系のそれぞれの格子単位を横に2等分した半格子単位のうち,正のものの比率(密北海道教育大学地理学教室度)である。このように,半格子変位の場合,変位後のパターンを決定するには,格子単位のレベルよりも詳細な,半格子単位のレベルでの正,負の情報が必要である。そこで正の半格子単位の分布として,ランダム分布を想定すると, P (m, n, p) は次のように表わされることが明らかとなった。 P (m, n, p)=2(1-p)m+2{(1-p)/(2-p)nfn}m=2(1-p)2m+2/(2-p)mn(fn)m ここでf1=1, f2=1, f3==1+p-p2, f4=1+3p-4p2+p3, f5=1+6p-9p2+3p3, ……である。しかしfnの一般形の導出には至らなかった。 上の式の意味するところを明らかにするため,まず最も単純なm=1, n=1の場合を考えてみると, P (m=1, n=1, p)=2(1-p)4/(2-p)である。すなわち,周囲を負の格子単位で囲まれた1個の孤立した正の格子単位が存在するとき,そのパターンが格子系の半格子変位により変化しない確率は2(1-p)4/(2-p)である。これはp→Oの極限で1であるが, p=0.5で0.083, p→1の極限で0というように, 0<p<1で単調かつ急速に減少する。つまりこの最も単純なパターンの場合, pが非常に小さいならば,そのパターンの不確定性は0%近くまで下がるものの,通常はかなり高いことがわかる。同様にして,m,nが増大すればP (m, n, p) は急速に小さくなること,そして一般にpが大きくなれば, P (m, n, p) が小さくなることが,はじめの式から導かれる。 以上のことから,格子単位の大きさの程度のパターンの不確定性が問題となるような場合には,格子図の使用は不適当であると結論される。なおここでは正の半格子単位の分布をランダムと仮定したが,種々のタイプの分布について同様の考察を行なうならば,分布の状況に対応して格子系の選択をすることに関して,より正確な判断をすることができるよう.になることが期待される。
著者
氷見山 幸夫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.158-163, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
21

1991年に旭川市で始められた「私たちの身のまわりの環境地図作品展」はこれまで,国内唯一の全国規模の地図展として発展してきた.その成果は環境教育,地理教育,地図教育,生涯学習など多岐にわたる.本稿では大学のアウトリーチ,すなわち社会貢献ないし社会との連携の観点から,北海道教育大学生涯学習教育研究センターがその発展に果した役割,およびこの地図展に関連した各種実践活動とそこで育まれた人々のつながりに焦点を当てた.その結果,この地図展が歩み来た道が,大学のアウトリーチを推進する上で有用な示唆に富み,それが学術的,教育的,社会的なさまざまな成果に結びついていることが再確認された.特に重要なのは,大学を中心とする環境,地図,教育に関わる小・中・高・大・官・民の連携が,学術–教育–社会の協働・協創を促進し,日本最大の地図展を発展させ,それが大学ないし学術のアウトリーチの一つのあり様を提示しているということである.
著者
氷見山 幸夫
出版者
公益社団法人 砂防学会
雑誌
砂防学会誌 (ISSN:02868385)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.62-72, 2011-01-15 (Released:2014-11-01)
参考文献数
8
著者
田村 俊和 氷見山 幸夫 田辺 裕 漆原 和子
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.179, 2003 (Released:2004-04-01)

地理学の特性としてしばしば語られる4つのキイワード(学際性,環境,地域,空間)を手がかりに,最近の日本の地理学研究の動向を,地理学の内外および国の内外から点検して,地理学はこれからどのようにしていくのがよいか,参加者とともに考えてみたい. 地理学の研究はほんとうに学際的か? たとえば変動地形の研究からジェンダーの地理学まで並べてみれば,その対象はきわめて多岐にわたり,個々の研究にとっての隣接分野は,全体としてはきわめて広い.しかし,本来多面的な地理学の個々の研究対象を,地理学(内の各分野)の研究において真に多面的視点から分析しているかというと,かなり心もとない.たとえば都市の緑地の配置やその評価・活用について,都市地理学,植生地理学,気候学等の研究者が共同で,あるいはその誰かが他方から知見や方法の教示を得て研究するよりも,都市計画や造園学などの研究者が,大胆に結論を出し,方策を提示している例が目につく.これら応用的とされる学問分野では,社会の要請する問題の構造を敏感に感じ取り,ときに自らの蓄積の少なさや手法の不十分さをも省みず,その要請に応える(かの)ような答を用意しようとしている.一方,地理学内部の個別の研究は,地理学が全体としては何とか保持している多面的視点をうまく活用できず,むしろ自らの視野を狭めているようにみえる. 地理学では環境の問題を正面から扱っているか? 環境への関心は,大小の波を経ながらも,1970年ころからは,社会において,したがって科学研究においても,高まってきた.古来,自然環境と人間活動との関係を重要な研究対象としてきたはずの地理学は,全体としてはこの波に乗れなかった.自然地理学のいくつかの分野では,個別の人為的環境悪化の発端となる現象のメカニズム研究で成果を上げたが,それを,問題発生の抑制に向けた人間(社会,企業,etc.)活動の規制にまで発展させて議論することは少なかった.人文地理学者の多くは,環境決定論批判の後遺症に陥っていて,人間-環境関係の研究に的確に取り組むすべを失っていたようにみえる.70年代後半ころから,大学その他で環境という語を冠した研究組織に地理学的発想をもった研究者が多少とも進出し,あるいはそのような組織の結成に積極的に関与して,関連する教育にも携わる例が増えてはきたが,一方で「地理学でも環境をやるのですか」という素朴な疑問が隣接分野から聞こえる状況は変わっていない.その原因の一つは,大学の教育体制にあると考えられる. 地理学では地域を深く認識しているか? 「環境」の場合と同様,「地域の科学」を自称することの多い地理学を置き去りにして,地理学の外の多くの分野で「地域(の)研究」が盛行している.しかしその中には,空間性を捨象した人間関係だけで地域をとらえているようなものもみられ,地理学が強みをもって地域の研究に(再)参入し,成果を上げる余地は,まだあるように思われる. 地理学は空間を扱う手法を発展させたか? いわゆる計量地理学の後で登場したGISは,地理学も学んだ地理学外の研究者・技術者により主として考案されたが,ある段階からは地理学出身者の寄与も小さくない.そして地理学研究・教育の強力な手法として,今までは概念的にしか論じられなかった空間現象を,具体的なデータに基づいて図示し,解析することが可能になってきている.地理学が伝統的に蓄積してきた空間解析の手法と知見を生かしつつ,この新しい手法の活用法や適用範囲の拡大を図り,新たな概念の展開にもつなげる可能性が,今までの実践の外にある. これからどのような方向をめざすのがよいか? たとえば,そろそろ時限の来るIGBPのような環境研究計画は,広範囲の学問分野を結集して初めてその推進が可能になるものではあるが,その一部を分担しつつ,各分野での成果をその都度結びつけ(できれば統合し)て全体像を示し,それが人間生活においてもつ意味を多面的に考え続け,公表していくということは,地理学諸分野の共通の目標になり得る.これにより,地理学内の少なくともいくつかの分野での研究は進展し,その他の分野にとっても波及効果があり,地理学全体として活性化し,その特性を外に向かってアピールできる.このような次の大きな研究課題を地理学から提案し,中心的に推進して行けないであろうか.