- 著者
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佐藤 正之
- 出版者
- 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
- 雑誌
- 高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.2, pp.204-211, 2020-06-30 (Released:2021-07-01)
- 参考文献数
- 7
- 被引用文献数
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失認は, “ 病前まで意味を有していた刺激の認識が特定の感覚モダリティを介してのみできなくなること ” と定義される。これまでの失認の報告の多くは視覚失認で, 聴覚失認がそれに次ぐ。患者は「見えない」「聞こえない」と訴えるため, 視力障害や難聴あるいは認知症や精神疾患と容易に誤診される。 患者が対象を正しく認知できているかは, 呼称課題により知ることができる。名称と意味・概念とは表裏一体で, 一方が想起されると他方も自動的に想起される。呼称が正しくできれば, 対象の知覚と意味・概念の想起, 両者の統合, 名称の想起が正常に機能していることを意味する。失認では特定の感覚で, 知覚されたイメージと意味・概念との統合が機能していないと解釈される。視覚失認, 聴覚失認ともに用語が混乱している。統覚型と連合型の二分法は理解しやすいが, 実際の症例ではいずれとも判断できないものも多い。症状の正確な記載がなによりも重要である。