- 著者
-
大城 直樹
- 出版者
- The Japan Association of Economic Geography
- 雑誌
- 経済地理学年報 (ISSN:00045683)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.1, pp.49-59, 2020-03-30 (Released:2021-03-30)
- 参考文献数
- 23
本稿では,東京で行われた(る) 二つのオリンピック大会に関連した都市(再) 開発の様相の異同について簡単な検討を行った.1964年と2020年の間には大きな差異が存在する.一言で言うならば,後者におけるイベント自体の商業化の進展と公的空間の大規模な再開発にともなう収益装置化,つまり公的空間の価値の使用価値から交換価値への転換に他ならない.都心部のみならず沿岸部の埋め立て地でも同様のことは行われている.他方,1964大会の特徴は,東京都心部の諸インフラの大々的な改造・建造であるが,事業は1960年代の高度経済成長期の状況ににわかに対応させたものであったため,今日では,諸々の建造環境が逆に都市成長の桎梏となり果てている.また,都市表象ないしは景観表象についても,衛生観念と結びついて,美化キャンペーンのもとで,ゴミやポスター,汚水・下水の不可視化が徹底された結果,人々の意識を大きく変容させることとなった.