- 著者
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福本 拓
- 出版者
- 地理空間学会
- 雑誌
- 地理空間 (ISSN:18829872)
- 巻号頁・発行日
- vol.8, no.2, pp.197-217, 2015 (Released:2018-04-04)
- 被引用文献数
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3
本稿の目的は,大阪市生野区の今里新地を事例に,花街として栄えた地域がエスニック空間へと変容する過程を解明し,その含意を考察することにある。分析に際しては,在日朝鮮人による土地取得とその後の韓国クラブの集中経緯に着目し,①資本の由来,②建造環境の変容,③人口移動との関係,④既存住民との接点,の4 つの観点から検討した。1960 年代以降,花街の関係者から在日朝鮮人への土地移転が進み,特にバブル期以降は賃貸マンションに加えスナックビルも建設され,「ニューカマー」の経営する韓国クラブが急増した。その背景には,花街の衰退のほか,バブル期以前に形成された在日朝鮮人の遊興空間へのニーズ,そして韓国から移入された労働者が居住しうる住宅の存在があった。また,在日朝鮮人の土地取得過程では,エスニック・ネットワークを介した土地取引があり,民族金融機関による融資も一定の役割を果たしていたことを指摘できる。