著者
影山 純二
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.110-113, 2015 (Released:2016-05-07)
参考文献数
12

主観的ウェルビーイング (SWB) に関して近年研究されてきた事柄の1つに,幸福度や生活満足度の年齢変化がある.しかし,その変化を理論的に説明する研究はない.そこで本研究は,満足の裏返しである不満が行動インセンティブになっていることに着目して,その年齢変化を進化生物学のフレームワークの中で考察し,そこで得られた仮説を検証した.進化生物学の中でも生活史理論を用いて得られた仮説は,所得不足と配偶者/生殖パートナーがいないことのそれぞれの不満へのインパクトは生殖年齡期に最も大きく,他の要因をコントロールした上での生活満足度(ベースライン)は生殖年齡期に最も低くなるというものである.ブリティッシュ・ハウスホールド・パネル・サーベイ (BHPS) を用いた回帰分析では,すべての仮説と整合的な結果が得られた.所得不足や配偶者/生殖パートナーがいないことの生活満足度への効果は30歳前後で最も大きく,生活満足度のベースラインはU字型で中年期に最も低くなった.本研究の結果は,生活満足度のベースラインが進化上適切な行動を促すインセンティブの強さを表し,グロスで見た際の生活満足度や人間行動の年齡変化を考察する上で重要な情報になることを示唆している.

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所得不足や配偶者/生殖パートナーがいないことの生活満足度への効果は30歳前後で最も大きく,生活満足度のベースラインはU字型で中年期に最も低くなった⇒不満のライフサイクル https://t.co/gl9NrksSiA

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