著者
松尾 和人 吉村 泰幸
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.1-8, 2015 (Released:2015-02-23)
参考文献数
41

遺伝子組換え作物は,米国を筆頭に,全世界の27か国,約1.75億haで栽培されている.中でも除草剤に耐性を有する遺伝子組換え作物は,その有用性から,1996年の大規模栽培の開始後急速に普及したが,その結果,新たな懸念が発生した.一つは除草剤に抵抗性を持つ雑草の出現であり,もう一つは搬送中の種子のこぼれ落ちによる遺伝子組換え作物の野生化である.除草剤耐性作物には,グリホサートとグルホシネートに耐性を持たせたものがほとんどであるが,このような特定の除草剤を頻繁に使用することにより,除草剤に抵抗性を持つ雑草が出現した.その発生は,米国をはじめ遺伝子組換え作物の栽培が盛んな国々で報告され,抵抗性抑止の提言や農家の意識調査など,多くの有用な研究や報告がなされている.また,油糧等の原材料として作物を輸入する複数の国で,野外で生育しているセイヨウナタネ等の遺伝子組換え作物の報告例がある.これまでの調査では,自然環境下で,除草剤耐性遺伝子組換えセイヨウナタネが,普通のセイヨウナタネと比べ競合性において優位性を持たないと判断されている.新たな遺伝子組換え作物の非生物的ストレス耐性品種や多くの形質がスタックされた品種に対しても,その有用な技術を長く使用するためには,過度に依存せず,これまでに培われてきた機械的な除草方法や栽培学的な手法も取り入れ,除草剤抵抗性作物を利用した持続的な雑草管理技術を開発していくことが重要である.

言及状況

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