著者
片岡 宏介 吉松 英樹 栁沢 志津子 三宅 達郎
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.13-20, 2023 (Released:2023-02-15)
参考文献数
23

ヒト成人の皮膚総面積の200倍以上を占める粘膜の表層では,常に細菌やウイルスといったさまざまな病原体が体内への侵入を試みている.それに贖う手段として,非特異的防御バリア(自然免疫機構)と特異的防御バリア(獲得免疫機構)が粘膜部では作働している.粘膜ワクチンは,病原体の侵入門戸である粘膜面に病原体由来の抗原と免疫賦活化剤(アジュバント)を直接投与することにより,自然免疫機構を効率良く誘導し,異的防御バリアの主体となる抗原特異的分泌型IgA抗体を産生することを可能とする. われわれはこれまで,加齢の影響を受けにくい鼻咽腔関連リンパ組織(NALT)の樹状細胞をターゲットに,サイトカインFlt3 ligand発現DNAプラスミドとCpGオリゴデオキシヌクレオチドを併用した経鼻ダブルDNAアジュバント(dDA)システムの構築を行い,高齢者にも応用可能な粘膜ワクチンの開発を目指してきた. 本稿では,経鼻dDAシステムが抗老化作用を有すること,また感染症のみならずNCDs発症を防ぐ経鼻ワクチンへの応用の可能性について,われわれの最新の知見を紹介する.近い将来,本粘膜ワクチンが,感染症だけでなくNCDsをも制御することで,わが国の「健康寿命の延伸」と「健康格差の縮小」という国家課題の克服と,世界的に進行する超高齢社会における高齢者のQOL向上に寄与できるツールとなり,口腔保健医療サービスの充実に貢献できればと考える.

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