著者
川本 哲也 遠藤 利彦
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.144-157, 2015 (Released:2017-06-20)
参考文献数
48
被引用文献数
1

本研究の目的は,東京大学教育学部附属中等教育学校で収集されたアーカイブデータを縦断的研究の観点から二次分析し,青年期の非言語性知能の発達とそれに対するコホートの効果を検討することであった。分析対象者は3,841名(男性1,921名,女性1,920名)であり,一時点目の調査時点での平均年齢は12.21歳(SDage=0.49;range 12–17)であった。分析の対象とされた尺度は,新制田中B式知能検査(田中,1953)であった。青年の知能の構造の変化とスコアの相対的な安定性,平均値の変化について別個に検討を行った。その結果,知能の構造に関しては青年期を通じて強く一貫していること,相対的な安定性は先行研究と同様の中程度以上の安定性を保つことが示された。また平均値の変化については,知能は青年期を通じて線形的に上昇していくが,コホートもまた知能の平均値に対して有意な効果を示し,かつその変化の傾きに対してもコホートが効果を持つことが示唆された。ただしその効果の向きについては一貫しておらず,生まれ年が新しいほど,新制田中B式知能検査のうちの知覚に関連する領域では得点が上昇し,その上昇の割合も大きなものであった。その一方で事物の関連性などを把握する能力では,生まれ年が新しいほど得点が低下してきており,加齢に伴う得点の上昇の割合も緩やかになってきていることが示唆された。

言及状況

外部データベース (DOI)

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日本における知能の年次変化の知見はサンプルのコホートが古く、今現在の様子を反映していない可能性 このフリン効果は母集団レベルでの知能の平均値が年々高くなっていくこと指すがコホートのもたらす効果は他にも考えられる https://t.co/nEGMc4sP4E https://t.co/w9mbb1nEyc
2021.9.5 学歴による社会の分断「日本人の3人に1人は https://t.co/7a6KcBHSeR 発達心理学研究 2015第26巻 知能の得点はほぼ年齢に応じて上がっていく となってるけどサンプルが東京大学教育学部付属中学 だけと偏ってるので今後は複数のサンプリング研究必要となってますね https://t.co/nEGMc4sP4E https://t.co/qfC4QnwSg7

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