著者
遠藤 利彦
巻号頁・発行日
2017-03

第1部 非認知能力についての研究動向・・・・・・・・・・5 第1章 非認知能力をめぐって:本プロジェクト研究の目的と視点・・・・・7 第1節 非認知能力に関する研究動向・・・・・7 第2節 本プロジェクトの研究課題・・・・・9 第3節 本研究の焦点・・・・・10 第4節 本研究の目的1:社会情緒的コンピテンスについての文献調査による知見の整理・・・・・11 第5節 本研究の目的2:社会情緒的コンピテンスについての実証的研究・・・・・13 第6節 本報告書の構成・・・・・13 第2章 「非認知」なるものの発達と教育:その可能性と陥穽を探る・・・・・15 第1節 「非認知」なるものへの刮目の興りと展開・・・・・15 第2節 「IQ神話」への疑い・・・・・16 第3節 「非認知」なるものの教育の可能性を示す論拠の希薄さと新たなエビデンスの必要性・・・・・18 第4節 「非認知」なるものとは何か?・・・・・20 第5節 「非認知」の何をいかに教育のターゲットとするか?・・・・・22 第6節 結びに代えて:「非認知」の絶対的基盤としての基本的信頼感とアタッチメント・・・・・24第2部 社会情緒的コンピテンスの内容と発達に関する文献調査・・・・・29 第1章 乳児期・・・・・31 第1節 標準的な社会情緒的コンピテンスの発達・・・・・32 第2節 社会情緒的発達における個人差とその要因・・・・・45 第3節 アタッチメント・・・・・59 第2章 幼児期・・・・・69 第1節 自己とその制御の発達・・・・・70 第2節 他者と心の理解・・・・・80 第3節 他者との関わり・・・・・89 第3章 児童期・青年期(1)子供の心理特性・・・・・103 第1節 子供の人となりとその規定要因・・・・・104 第2節 子供の自己の発達・・・・・118 第3節 社会的・道徳的感情とその感情特性・・・・・130 第4節 アタッチメント・・・・・150 第5節 ストレスに対処する個人特性・・・・・158 第4章 児童期・青年期(2)教育場面と発達・・・・・167 第1節 教育文脈で育まれるコンピテンス:学習意欲議論と測定・・・・・168 第2節 感情を学ぶ:Emotional Intelligence(EI;感情知性)をめぐって・・・・・177 第3節 コンピテンスを育む教育環境:学級における営み・・・・・196 第4節 コンピテンスを育む教育環境:教科指導以外の教育の営み・・・・・196 第5章 社会情緒的コンピテンスに関する長期縦断研究・・・・・203第3部 日本の子供の社会情緒的コンピテンスについての実証研究・・・・・237 第1章 乳児期・・・・・239 乳児期の社会的コミュニケーション行動の発達 第2章 幼児期・・・・・247 第1節 研究A セルフコントロールの発達・・・・・247 第2節 研究B 幼児期の社会情緒的能力と社会的行動の発達・・・・・251 第3章 児童期・青年期・・・・・257 児童期・青年期における社会情緒的コンピテンスの様相巻末資料・・・・・277 表1 社会情緒的発達の概要・・・・・279 表2 社会情緒的コンピテンスの一覧・・・・・280
著者
西田 季里 久保田(河本) 愛子 利根川 明子 遠藤 利彦
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
no.58, pp.31-39, 2019-03-29

With the growing interest in "non-cognitive abilities" in the field of early childhood education in recent years, it is necessary to carefully examine once again what is the non-cognitive( socio-emotional) competence, and what it means to support the growth of non-cognitive( socio-emotional) competence. This paper examines the major, previous findings of non-cognitive( socio-emotional) competence with a particular focus on the self-efficacy and intrinsic motivation among other non-cognitive( socio-emotional) competence and describes the baseline temperament for intervention and its content, as well as measuring techniques for young children.
著者
遠藤 利彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.150-161, 2010-03-30 (Released:2012-03-27)
参考文献数
85
被引用文献数
6 2

ボウルビーの主要な関心は, 元来, 人間におけるアタッチメントの生涯にわたる発達(すなわち連続性と変化)と, 情緒的に剥奪された子どもとその養育者に対する臨床的な介入にあった。近年, 幼少期における子どもと養育者のアタッチメント関係が, 子どもの, アタッチメントの質それ自体を含めた, その後の社会情緒的発達にいかなる影響を及ぼすかということについて, 実証的な知見が蓄積されてきている。本稿では, まず, 児童期以降におけるアタッチメントとその影響に関する実証研究と, 乳児期から成人期にかけてのアタッチメントの個人差の安定性と変化に関するいくつかの縦断研究の結果について, 概観を行う。次に, アタッチメント理論の臨床的含意について, 特に, 無秩序・無方向型アタッチメントとアタッチメント障害, そして, そうした難しい問題を抱えた事例に対するアタッチメントに基づく介入に焦点を当てながら, レビューし, また議論を行う。最後に, 日本の子どもと養育者のアタッチメント関係の特異性をめぐる論争とそれが現代アタッチメント理論に対して持つ理論的含意について批判的に考察し, さらに日本におけるアタッチメント研究の現況が抱えるいくつかの課題を指摘する。
著者
数井 みゆき 遠藤 利彦 田中 亜希子 坂上 裕子 菅沼 真樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.323-332, 2000-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
31
被引用文献数
5 20

本研究では現在の親の愛着とそれが子の愛着にどのように影響を及ぼしているのかという愛着の世代間伝達を日本人母子において検討することが目的である。50組の母親と幼児に対して, 母親には成人愛着面接 (AAI) から愛着表象を, 子どもには愛着Qセット法 (AQS) により愛着行動を測定した。その結果, 自律・安定型の母親の子どもは, その他の不安定型の母親の子どもよりも, 愛着安定性が高いことと, 相互作用や情動制御において, ポジティブな傾向が高いことがわかった。また特に, 未解決型の母親の子は, 他のどのタイプの母親の子よりも安定性得点が低いだけでなく, 相互作用上でも情動制御上でも, 行動の整合性や組織化の程度が低く混乱した様子が, 家庭における日常的状況において観察された。ただし, 愛着軽視型ととらわれ型の母親の子どもは, 安定型と未解決型の母親の子どもらの中間に位置する以外, この両者間での差異は認められなかった。愛着の世代間伝達が非欧米圏において, 実証的に検証されたことは初めてであり本研究の意義は大きいだろう。しかし, さらなる問題点として, AAIやAQSの測定法としての課題と母子関係以外における社会文化的文脈の愛着形成への影響という課題の検討も今後必要であろう。
著者
齊藤 崇子 中村 知靖 遠藤 利彦
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.517-522, 2005-02-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
15
被引用文献数
5 7

The present study examined whether scores on big five personality factors correlated with face-recognition response time in visual search paradigm. Sixty adjectives were used to measure personality scores of 60 participants along the five factors of Extroversion, Neuroticism, Openness to Experience, Agreeableness, and Conscientiousness. Picture of human faces or geometrical figures in a 4×4 array were used as stimuli. The sixteen faces or figures were either identical (absent condition) or one randomly placed target with 15 identical distracters (present condition). Participants were asked to respond ‘present’ or ‘absent’ as fast and accurately as possible. Results showed that the response time differed significantly between high and low groups of each personality factor except Agreeableness. For Extroversion, Neuroticism, and Conscientiousness, the response time difference was observed only for human face recognition. The results suggested that personality differences and face recognition were related.
著者
大塚 雄作 柴山 直 植阪 友理 遠藤 利彦 野口 裕之
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.209-229, 2018-03-30 (Released:2018-09-14)
参考文献数
62
被引用文献数
1 1

現在進められている高大接続改革の進展の中で,「学力」をどう捉え,どう評価すべきかといった基本的な部分で,十分な理解が共有されているとは言い難いことをしばしば経験する。調査と選抜試験という評価・測定の目的の違いが安易に軽視されたり,形成的評価に適合する手法や,子どもに必要とされる非認知的要因などの評価が,短絡的に選抜における学力評価などに適用されようとしたりする。 評価・測定は,目的や対象にふさわしい評価手法を状況に応じて選択するということが重要であり,それは高大接続改革のみならず,教育心理学研究においても基本とすべきことである。本討論では,以下の諸点に関して,教育心理学研究の領域における研究事例を紹介しつつ論じていくこととする。(a)大規模学力調査において,目的と設計仕様との整合性の担保,個人スコアと集団スコアの使い分け,データ収集デザイン等が重要という点について。(b)日常的な学校教育実践において,どのような形成的評価が有効に機能するのかについて。(c)子どもの発達に影響を及ぼすと思われる人生早期に培われる「非認知」的な心の性質に関わる研究動向と課題について。
著者
遠藤 利彦
出版者
東京大学教育学部
雑誌
東京大学教育学部紀要 (ISSN:04957849)
巻号頁・発行日
no.29, pp.p229-241, 1989

The term "transitional object" was first used by Winnicott (1953) to refer to inanimate objects, e. g. a soft toy or blanket, often specially used to provide comfort or solace in infancy and early childhood. A number of psychoanalysts and empirical researchers have followed Winnicott, and today it is generally accepted that infant's attachment to a transitional object is universal on the basis of the "good-enough" relationship of mother and infant, and that its absence or misuse is associated with psychopathy, later cognitive or character disorders. Nevertheless there appear to be some logical fallacies in this conceptualization and important unanswered questions about the origin and meaning of transitional objects, which need further consideration. In this paper, a theoretical contradiction of Winnicott's thesis is pointed out and an alternative interpretation of the origin and meaning of transitional objects is submitted.
著者
遠藤 利彦
出版者
日本感情心理学会
雑誌
エモーション・スタディーズ (ISSN:21897425)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.25-30, 2016-10-01 (Released:2017-05-31)
参考文献数
29
被引用文献数
2

Recently there have been accumulating evidences on the mechanism of some emotions supporting human sociality. In this essay, firstly, I point out that humankind’s ultimate strength is the higher and sophisticated sociality. And then, on the basis of recent trends of socio-emotional psychology and behavioral economics, I discuss the function of some emotions as estimator and/or coordinator of the balance of interests and welfares between self and others. Additionally, I mention the nature of shame, sensitizing us to others’ social “eyes” and orienting us towards moral conducts.
著者
高橋 翠 遠藤 利彦
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.165-173, 2013-02-28 (Released:2013-04-05)
参考文献数
25

顔の魅力に対する進化心理学的アプローチは,異性の容貌において繁殖に寄与する資質の手がかりがヒトに普遍的な魅力規定因であると仮定する.しかし,男性顔において「男らしさ」が知覚される容貌は優れた資質のシグナルであるが,女性は必ずしも魅力を知覚しない.本研究では,「男らしい」容貌から知覚される脅威性もまた,そうした容貌に対する魅力評価を抑制している可能性に着目した.男性顔(無表情・直視)に対する印象評価の多変量解析的検討(研究1),および表情(無表情・笑顔)と視線(直視・逸視)の異なる条件下での魅力評定(研究2)を通じて,評定者の性にかかわらず,脅威性(および脅威表情)の知覚が「男らしい」容貌に対する魅力評価を抑制している可能性が示唆された.ただし研究2では,男女で異なる結果として,女性評定者のみで脅威性が相対的に知覚されにくい場合に「男らしさ」の優れた資質のシグナルとしての側面が魅力として知覚されるようになる可能性も示唆された.
著者
数井 みゆき 遠藤 利彦 田中 亜希子 坂上 裕子 菅沼 真樹
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.323-332, 2000-09-30
被引用文献数
4

本研究では現在の親の愛着とそれが子の愛着にどのように影響を及ぼしているのかという愛着の世代間伝達を日本人母子において検討することが目的である。50組の母親と幼児に対して, 母親には成人愛着面接(AAI)から愛着表象を, 子どもには愛着Qセット法(AQS)により愛着行動を測定した。その結果, 自律・安定型の母親の子どもは, その他の不安定型の母親の子どもよりも, 愛着安定性が高いことと, 相互作用や情動制御において, ポジティブな傾向が高いことがわかった。また特に, 未解決型の母親の子は, 他のどのタイプの母親の子よりも安定性得点が低いだけでなく, 相互作用上でも情動制御上でも行動の整合性や組織化の程度が低く混乱した様子が, 家庭における日常的状況において観察された。ただし, 愛着軽視型ととらわれ型の母親の子どもは, 安定型と未解決型の母親の子どもらの中間に位置する以外, この両者間での差異は認められなかった。愛着の世代間伝達が非欧米圏において, 実証的に検証されたことは初めてであり本研究の意義は大きいだろう。しかし, さらなる問題点として, AAIやAQSの測定法としての課題と母子関係以外における社会文化的文脈の愛着形成への影響という課題の検討も今後必要であろう。
著者
遠藤 利彦
出版者
東京大学教育学部
雑誌
東京大学教育学部紀要 (ISSN:04957849)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.203-220, 1993-03-30

Many theorists suggest that an individual's past relationship experiences with his or her own parents are carried forward and reenacted in subsequent relationships, especially present relationships established with his or her own children. This notion of intergenerational transmission of caregiver-child relationships originated in psychoanalytic theories, and later came to be explored in association with child-maltreatment, attachment, and so on. Bowlby postulated that children internalize their transactional patterns with caregivers and construct representational models, i. e. "internal working models", of self and other in attachment relationships, and that these models, used to perceive and appraise informations and to plan future actions, then govern relationship patterns with others. Currently Bowlby's concept of "internal working models" offers a new framework for understanding intergenerational transmission of attachment relationships. In this paper, a wide variety of theoretical, clinical, and empirical studies concerning this theme were reviewed, and, in addition, directions for continued research were discussed.
著者
高橋 翠 遠藤 利彦
出版者
The Japanese Society for Cognitive Psychology
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.165-173, 2013

顔の魅力に対する進化心理学的アプローチは,異性の容貌において繁殖に寄与する資質の手がかりがヒトに普遍的な魅力規定因であると仮定する.しかし,男性顔において「男らしさ」が知覚される容貌は優れた資質のシグナルであるが,女性は必ずしも魅力を知覚しない.本研究では,「男らしい」容貌から知覚される脅威性もまた,そうした容貌に対する魅力評価を抑制している可能性に着目した.男性顔(無表情・直視)に対する印象評価の多変量解析的検討(研究1),および表情(無表情・笑顔)と視線(直視・逸視)の異なる条件下での魅力評定(研究2)を通じて,評定者の性にかかわらず,脅威性(および脅威表情)の知覚が「男らしい」容貌に対する魅力評価を抑制している可能性が示唆された.ただし研究2では,男女で異なる結果として,女性評定者のみで脅威性が相対的に知覚されにくい場合に「男らしさ」の優れた資質のシグナルとしての側面が魅力として知覚されるようになる可能性も示唆された.
著者
川本 哲也 遠藤 利彦
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.144-157, 2015 (Released:2017-06-20)
参考文献数
48
被引用文献数
1

本研究の目的は,東京大学教育学部附属中等教育学校で収集されたアーカイブデータを縦断的研究の観点から二次分析し,青年期の非言語性知能の発達とそれに対するコホートの効果を検討することであった。分析対象者は3,841名(男性1,921名,女性1,920名)であり,一時点目の調査時点での平均年齢は12.21歳(SDage=0.49;range 12–17)であった。分析の対象とされた尺度は,新制田中B式知能検査(田中,1953)であった。青年の知能の構造の変化とスコアの相対的な安定性,平均値の変化について別個に検討を行った。その結果,知能の構造に関しては青年期を通じて強く一貫していること,相対的な安定性は先行研究と同様の中程度以上の安定性を保つことが示された。また平均値の変化については,知能は青年期を通じて線形的に上昇していくが,コホートもまた知能の平均値に対して有意な効果を示し,かつその変化の傾きに対してもコホートが効果を持つことが示唆された。ただしその効果の向きについては一貫しておらず,生まれ年が新しいほど,新制田中B式知能検査のうちの知覚に関連する領域では得点が上昇し,その上昇の割合も大きなものであった。その一方で事物の関連性などを把握する能力では,生まれ年が新しいほど得点が低下してきており,加齢に伴う得点の上昇の割合も緩やかになってきていることが示唆された。
著者
遠藤 利彦
出版者
東京大学
雑誌
東京大学教育学部紀要 (ISSN:04957849)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.203-220, 1993-03-30
被引用文献数
3

Many theorists suggest that an individual's past relationship experiences with his or her own parents are carried forward and reenacted in subsequent relationships, especially present relationships established with his or her own children. This notion of intergenerational transmission of caregiver-child relationships originated in psychoanalytic theories, and later came to be explored in association with child-maltreatment, attachment, and so on. Bowlby postulated that children internalize their transactional patterns with caregivers and construct representational models, i. e. "internal working models", of self and other in attachment relationships, and that these models, used to perceive and appraise informations and to plan future actions, then govern relationship patterns with others. Currently Bowlby's concept of "internal working models" offers a new framework for understanding intergenerational transmission of attachment relationships. In this paper, a wide variety of theoretical, clinical, and empirical studies concerning this theme were reviewed, and, in addition, directions for continued research were discussed.