著者
庭山 和貴
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.79-93, 2020-03-30 (Released:2020-05-01)
参考文献数
33
被引用文献数
10 6

本研究では,授業中の教師の言語賞賛回数の増加によって,生徒の授業参加行動が促進されることで,相対的に問題行動は減少するのかについて検証した。介入対象は公立中学校2年生の通常学級の教師8名と生徒122名(計4学級)であった。生徒指導上の問題発生率について,他学年を統制群として比較した。介入開始前のベースライン期では,言語賞賛が生徒の授業参加行動を伸ばすのに有効であることを教師に対して教示したが,その他は教室内での行動観察のみを行った。介入期では,教師が授業中に自身の言語賞賛回数を自己記録し,この回数を主幹教諭に報告した。主幹教諭は,言語賞賛回数が増えていれば教師を賞賛し,増えていなければ増やすよう奨励した。介入の結果,教師らの言語賞賛回数が増え,各学級の平均授業参加率が上昇した。さらに,生徒指導上の問題発生率は有意に減少した。介入を行わなかった他学年では,生徒指導上の問題発生率の減少は見られなかった。このような効果は,介入終了後のフォローアップにおいても,維持されていた。今後は,このような組織的な支援を学校規模で導入していく手順について,日本の学校教育システムに合わせたものを検討していく必要があると考えられる。

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