著者
平井 美佳
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.462-472, 2000-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
53
被引用文献数
2 1

本研究は, 人が“自己”と“他者”の両者の利益にともに配慮しながら, 状況に応じた自他の調整を行うプロセスを実験的に明らかにすることを目的とした。状況の規定要因として, 問題になる他者の種類と問題の深刻度の2要因を扱った。自己と他者の要求が葛藤する3種類の他者 (家族友人, その他の集団) と3水準の問題の深刻度 (レベル1; 低, レベル2; 中, レベル3; 高) に属す9つ [=3 (他者)×3 (水準)] のジレンマ課題を作成した。大学生63名 (男子29名, 女子34名, 18-23歳) を対象として, 各場面について「もし私だったらどうするか」について推論するプロセスを発話思考法によって検討した。その結果, 主に次の3点が明らかとなった。第1に, 推論のプロセスにおいて自己と他者の両者がともに配慮されること, 第2に, ジレンマに関わる他者別に見ると, 家族とのジレンマにおいては自己を優先させる傾向が強く, 友人およびその他の集団との葛藤においては相手を優先させる傾向があること, 第3に, 問題が深刻になるほど自己を優先させ, 問題が深刻でないほど他者を優先させる傾向があることであった。これらの結果から, 状況に応じた自己と他者の調整プロセスについて論じ, さらに, 研究方法と文化差についての理論の問題についても言及した。

言及状況

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問題解決場面における自己と他者の調整

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