著者
平井 美佳
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.103-113, 2000-02-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
30
被引用文献数
11 17

本研究は, いわゆる日本人論における「日本人らしさ」についてのステレオタイプを, 当の日本人はどのように捉えているのかを検討したものである。すなわち, 「日本人らしさ」のステレオタイプを「一般の日本人」については認めるにしても, 個々人に注目した場合には, それほどにはあてはまらないとするのではないかという仮説を検討した。まず, 代表的な日本人論の記述から2, 000項目を抽出し, これをもとに3ヵテゴリー45項目からなる「日本人らしさの尺度」を作成した。この尺度を用い, 大学生の男女226名に「一般の日本人」と「自分自身」の2評定対象についての評定を求めた。その結果, 「日本人らしさ」についての肯定度は「自分自身」についてよりも「一般の日本人」についてより高いという有意差が認められた。さらに, カテゴリー別には, 集団主義的傾向を記述したカテゴリーにおいて, 最も顕著な差が見出された。この結果に基づいて, 「一般の日本人」のレベルと個人のレベルの評定が異なる理由について考察した。
著者
池田 晋平 長谷川 裕司 関本 繁樹 王 建人 平井 美佳 芳賀 博
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.427-435, 2022-08-15 (Released:2022-08-15)
参考文献数
28

COVID-19の流行下における行動制限が地域在住高齢者の主観的健康感の悪化に及ぼす影響を検討するため,神奈川県綾瀬市の高齢者を対象に2019年12月と2020年7月に追跡調査を実施した.330名のうち2時点で健康維持(A群)75.2%,健康悪化(B群)7.3%であり,A群・B群を従属変数としたロジスティック回帰分析では,主観的健康感の健康悪化(B群)に「運動器機能の低下(リスクありを維持/ありへ悪化)」,「うつ傾向(リスクありを維持/ありへ悪化)」が影響し,作業療法士が高齢者の主観的健康感の悪化を予防していくうえで,身体の活動性やメンタルヘルスを維持していくことが手掛かりになると考えられた.
著者
平井 美佳 高橋 惠子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.327-335, 2003-10-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

This study examined how Japanese children resolve a conflict between their best friend and a newly-arrived transfer student; and whether their concepts of friendship and promise developed as those of Western children. A total of 125 children and college students, seven to 24 year old, of both genders were individually asked to report their moral understanding of friendship in a semi-structured interview. A Selman-type friendship dilemma of positing a conflict between a newcomer and their best friend was used. As expected, the average developmental stages scores, indicating understanding of the meaning of “friend” increased with the participant's age, in much the same way as in Western children. However, many resolved the conflict through a different strategy from those of their Western counterparts. They made an inference regarding the newcomer's emotion, seriously took into consideration, and expressed preference to solve the problem through the three playing together. The role of social representation mediating culture effects on social behavior discussed.
著者
平井 美佳
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.462-472, 2000-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
53
被引用文献数
2 1

本研究は, 人が“自己”と“他者”の両者の利益にともに配慮しながら, 状況に応じた自他の調整を行うプロセスを実験的に明らかにすることを目的とした。状況の規定要因として, 問題になる他者の種類と問題の深刻度の2要因を扱った。自己と他者の要求が葛藤する3種類の他者 (家族友人, その他の集団) と3水準の問題の深刻度 (レベル1; 低, レベル2; 中, レベル3; 高) に属す9つ [=3 (他者)×3 (水準)] のジレンマ課題を作成した。大学生63名 (男子29名, 女子34名, 18-23歳) を対象として, 各場面について「もし私だったらどうするか」について推論するプロセスを発話思考法によって検討した。その結果, 主に次の3点が明らかとなった。第1に, 推論のプロセスにおいて自己と他者の両者がともに配慮されること, 第2に, ジレンマに関わる他者別に見ると, 家族とのジレンマにおいては自己を優先させる傾向が強く, 友人およびその他の集団との葛藤においては相手を優先させる傾向があること, 第3に, 問題が深刻になるほど自己を優先させ, 問題が深刻でないほど他者を優先させる傾向があることであった。これらの結果から, 状況に応じた自己と他者の調整プロセスについて論じ, さらに, 研究方法と文化差についての理論の問題についても言及した。
著者
平井 美佳
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.103-113, 2000
被引用文献数
17

本研究は, いわゆる日本人論における「日本人らしさ」についてのステレオタイプを, 当の日本人はどのように捉えているのかを検討したものである。すなわち, 「日本人らしさ」のステレオタイプを「一般の日本人」については認めるにしても, 個々人に注目した場合には, それほどにはあてはまらないとするのではないかという仮説を検討した。まず, 代表的な日本人論の記述から2, 000項目を抽出し, これをもとに3ヵテゴリー45項目からなる「日本人らしさの尺度」を作成した。この尺度を用い, 大学生の男女226名に「一般の日本人」と「自分自身」の2評定対象についての評定を求めた。その結果, 「日本人らしさ」についての肯定度は「自分自身」についてよりも「一般の日本人」についてより高いという有意差が認められた。さらに, カテゴリー別には, 集団主義的傾向を記述したカテゴリーにおいて, 最も顕著な差が見出された。この結果に基づいて, 「一般の日本人」のレベルと個人のレベルの評定が異なる理由について考察した。
著者
平井 美佳 神前 裕子 長谷川 麻衣 高橋 惠子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.56-69, 2015 (Released:2017-03-20)
参考文献数
34

本研究は,わが国の未就学児に必須な養育環境とは何かについて,人々の持つ素朴信念を検討し,相対的貧困の指標とされる社会的必需品を考える一助とすることを目的とした。研究1では,先行研究を検討し,専門家および未就学児の親の意見を加味して40項目から成る「乳幼児に必須な養育環境リスト(What Children Need List:WCNリスト)」を作成した。未就学児の母親484名を協力者として,自分の子どもの養育環境の充足の程度を確認したところ,37項目で合意基準(50%以上)を超え,また,主観的経済状態を統制した上でも養育環境が充たされているほど子どもの発達が良好であるという関連が見出され,WCNリストの妥当性が確認された。研究2では,WCNリストを用いて未就学児の親503名(2a),性別と居住地域を人口動態に合わせた全国の市民1,000名(2b),および,未就学児のひとり親74名(2c)を協力者として,「現在の日本の子どもが健康に育つために必要である」と考える程度について尋ねた。その結果,合意基準を超えた項目は,2a~2cのそれぞれで19項目,9項目,30項目とサンプルにより異なり,特に未就学児を養育している当事者である,女性である,年代が若いことが合意を促進する要因であることが明らかになった。この結果について,本研究の限界と将来の課題を論じた。
著者
平井 美佳
出版者
横浜市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は,中国,韓国,台湾,アメリカ,日本の大学生を対象として,自己と他者の要求が葛藤するジレンマ場面における両者の調整について,文化の共通性と差異を明らかにすることを目的とした。調査の結果,場面の深刻度が高いほど自己優先的な程度が増すことがすべての国の大学生で共通して認められた。一方で,文化差については,より深刻度が高い場面では日本と韓国において,あまり深刻ではない場面ではアメリカと台湾においてより自己優先的な傾向が高かった。また,家族に対してはアメリカ・日本・台湾において,友人に対しては韓国・台湾・アメリカにおいて,より自己優先的であることが示された。