著者
吉田 勝美 松田 弘史 武藤 孝司 桜井 治彦 近藤 東郎
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.935-940, 1990-10-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
19

長期の体重変動が,肥満の健康影響を評価する上で,関心を呼んでいる。体重の増加量が及ぼす健康影響は知られるものの,体重増加の時間的経緯による健康影響については,ほとんど知られていない。本研究の目的は,体重増加の時間的経緯として,増加速度がもたらす健康影響を評価することである。某企業の1,627名男子従業員の中から,次の基準により,解析対象を選択した。選択基準は,以下のごとくである。1)対象者は,少なくとも20回以上の健康診断を受診している。2)対象者は,青年期より7kg以上の体重増加を認める。上記の基準により,437名が選択された。対象者の年齢は,46.2±5.1歳(M±S.D.)であった。体重の増加速度により,対象者を以下の3群に分けた。急速体重増加群は,5年間に5kg以上の増加を認めた者であり,167名が分類された。緩徐体重増加群は,5年間に5kg未満の体重増加を認めた者であり,212名が分類された。観察期間中に,一時的な体重減少を認めた残りの58名は,その他の群として,以下の解析から除外した。現時点の比体重を補正したMantel-Haenszel odds比は,空腹時血糖の有所見(110mg/dl以上)に関して,急速体重増加群で有意に高かった。また,体重増加速度以外の要因を含めたロジスティック解析の結果では,空腹時血糖の有所見に関するロジスティック式に,年齢とともに体重増加速度が取り込まれ,体重増加速度のodds比は,2.86(95%C.I.:1.35-6.06)であった。血圧,総コレステロール,中性脂肪,尿酸の有所見の発現に関して,体重増加の有意な関係は認めなかった。以上より,青年期から7kg以上の体重増加を認めた者において,体重増加速度が糖代謝異常の発現に関連していることが示され,体重増加速度が有する健康危険指標の意義が確認された。

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