- 著者
-
原 由紀
- 出版者
- The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
- 雑誌
- 音声言語医学 (ISSN:00302813)
- 巻号頁・発行日
- vol.46, no.3, pp.190-195, 2005-07-20 (Released:2010-06-22)
- 参考文献数
- 14
- 被引用文献数
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5
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吃音はその多くが幼児期に発症するといわれている.1歳9ヵ月に発吃した症例の経過を通して, 幼児期吃音の治療を検討した.幼児期の吃音治療は, (1) 子供への楽な発話モデルを中心とした流暢な発話体験を増加させる働きかけ, (2) 両親への徹底したコミュニケーション環境調整の指導, (3) 吃音や自己に対し否定的な感情をもたせない対応, が柱となる.言語聴覚士による適切な発話モデルの提示や発話の誘導により子供に流暢な発話体験を増加させることが可能である.こうした働きかけは, 両親に対してもコミュニケーションのモデルとなり, コミュニケーション環境改善に不可欠である.早期からことばの出にくさを訴える症例もあり, 慌てずに耳を傾け, 特別視せずに, 一緒に対応を考えること, 自己肯定体験を数多く行わせ自信をつけさせることが有効であった.