著者
加藤 克
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.123-132, 2017 (Released:2017-11-16)
参考文献数
16
被引用文献数
1

生物学標本の蓄積は,当該種の形態的,地理的分布の歴史的変遷に貢献するが,古い時代に採集された標本には,採集データが付属しない場合があり,有効に利用できないことがある.本研究では,採集年次不明の山階鳥類研究所所蔵ヤマゲラPicus canus標本(YIO-23324)を対象に,付属ラベルの利用年代の考察と採集者のフィールドノートの記載情報を利用してその採集年次情報の復元を試み,研究資源としての標本価値の向上を目的とした.この結果,標本の旧蔵機関である帝国大学で利用されていたラベルの付属から1885年以前の採集標本であること,ラベルに記載されている「ブラッキストン」という採集者名と日本の鳥学の近代化に貢献したThomas Blakistonのフィールドノートの照合から,1881年5月にBlakistonによって採集された標本である可能性が高いことを示した.この結果を援用することで,山階鳥類研究所に所蔵されている帝国大学旧蔵標本のうち,採集年次が判明しない標本の一部についても19世紀収集標本であることを裏付ける情報を整理した.以上の結果に基づき,古い標本を利用した研究の健全な遂行の上では,コレクションヒストリーの解明と,標本情報の再検討研究の継続が必要であることを提言した.

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