- 著者
-
宮崎 真
- 出版者
- 一般社団法人 日本薬剤疫学会
- 雑誌
- 薬剤疫学 (ISSN:13420445)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, no.2, pp.63-72, 2015-12-31 (Released:2016-02-04)
- 参考文献数
- 44
- 被引用文献数
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ワクチンのファーマコビジランスは,他の医薬品とは異なる留意点がある.本稿では,ワクチンのファーマコビジランスにおいて自発報告データベース・医療情報データベース(レセプトデータベース,診療情報データベース)が果たす役割について,その現状・可能性を考察する.自発報告データベースにおいては,社内データベース・医薬品副作用データベース(JADER)等既にワクチンのファーマコビジランス活動に利活用可能なデータベースが構築されており,予防接種の効果不良やワクチンの質に由来する問題の検出・統計的シグナル検出に対し一定の活用が可能である.今後,自発報告データベースへの症例の更なる集積によるシグナル検出力の増加,更に予防接種時事故報告制度とのデータ共有,副反応検討部会情報のデータベース化,予防接種副反応分析事業の開始等により自発報告のデータを用いたファーマコビジランス活動がより強固なものになることを期待する.医療情報データベースにおいては,ワクチン接種情報が捕捉できないというクリティカルな限界が現状あるものの,注目すべき特定事象の背景発生率や感染症の発生動向の把握等,現段階において既に利用可能な点も認められる.また医療情報データベースにおける検討が,感染症発生動向調査や定期予防接種の接種率の把握等現行の各制度の代替手段となる可能性がある.電子的に管理された予防接種履歴と他の医療情報とのデータリンケージを介して構築されるデータベース,一次データを収集する必要性等各制度の見直し,電子カルテ上のワクチンコードの標準化,母子健康手帳情報のデータベース化等,医療情報データを中心にワクチンのファーマコビジランスの更なる変革が訪れることを期待する.