著者
荻野 朋子 篠崎 恵美子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.448-459, 2022 (Released:2022-02-20)
参考文献数
22

認知症を抱える人が自分らしさを発揮する機会は重要である。認知症治療の考え方には,行動・心理症状の治療には,非薬物療法を薬物療法より優先的に適用するという原則がある。しかし,非薬物療法のエビデンスレベルは弱い。本研究では,写真療法を認知症高齢者に実施し,自律神経のバランスと揺らぎを整えることへの有効性を検証した。写真療法は,既存のプログラム(写真撮影,写真選択,アルバム作成,発表会)を基に実施した。軽度・中等度アルツハイマー型認知症高齢者10名には,認知症に配慮したプログラムを週1回計8回実施した。また,写真療法による自律神経データの変動を確認するために,認知症のない健康高齢者5名に,既存のプログラムを2週に1回計4回実施した。実施前・中・後に指尖脈波を測定し得られた自律神経バランス(Autonomic Nerve Balance:ANB)と最大リアプノフ指数(Largest Lyapunov Exponent:LLE)について,認知症高齢者各66データ,健康高齢者各20データを分析した。認知症高齢者のANBは,緊張状態の割合が実施前40.3%から実施中27.3%へ減少し,バランス良好は20.9%から36.4%へ増加した。LLEは,揺らぎが小さい(環境への適応力低下)状態の割合が実施前53.3%から実施中42.4%へ減少し,バランス良好は37.9%から53.0%へ増加し,健康高齢者の結果より顕著であった。以上より,認知症高齢者への写真療法には,自律神経のバランスと揺らぎを整える可能性があることが示唆された。

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