著者
釜崎 太
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
pp.29.2.1, (Released:2021-08-30)
参考文献数
31

現代においては、国や自治体だけではなく、企業や地域住民にも公的な課題への貢献が期待されている。ドイツでは、非営利法人が共的セクターとなって、自治体、企業、地域住民と連携し、公的な課題に取り組む事例が見られる。本研究が対象とする非営利法人は、ドイツのVerein(フェアアイン)である。Vereinは、法体系からは「社団」と訳される。しかし、スポーツクラブを運営するVereinが公的優遇を受ける登記法人(eingetragener Verein)であり、特にブンデスリーガの関係者にとっては、市場経済に対抗しつつ公益性を担保する自治的集団として意識されていることを重視する立場から、本研究では「非営利法人」と規定している。 ドイツにおいて非営利法人が運営するスポーツクラブが急増する1960年代以降、非営利法人をひとつのセクターとしながら数多くの社会運動が展開され、対抗文化圏が形成されていく。特に空き屋占拠運動で知られるアウトノーメは、FCザンクトパウリを動かし、反商業主義と反人種主義の運動を象徴するプロサッカークラブ(を一部門とする総合型地域スポーツクラブ)を生み出す。その一方で、90年代後半、プロサッカークラブの企業化が認められたブンデスリーガにおいては、非営利法人の議決権を保護する「50+1ルール」が定められ、プロサッカークラブ(企業)によるファンの獲得が、総合型地域スポーツクラブ(非営利法人)の資金を生み出す仕組みがつくられると同時に、非営利法人を軸とする市民社会のもとで、多様な地域課題への取り組みが実現されてきた。 本研究では、SVヴェルダー・ブレーメン非営利法人理事長、1FC. ケルン合資会社社長と顧問弁護士、FCザンクトパウリ非営利法人理事への聞き取り調査をもとに、ブンデスリーガに見られる市民社会の特徴と非営利法人の機能を明らかにした。

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