著者
岩尾 一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.139-144, 2012-12-21 (Released:2018-07-26)
参考文献数
22
被引用文献数
1

全ての生物学的事象には至近要因と究極要因が存在する。伝統的に獣医学は病気の至近要因に集中してきた。進化医学は,病気の究極要因を問う学問分野である。本稿では,進化医学の概念と,進化医学の主流テーマから,感染症と宿主防御,進化適応環境(EEA)とのミスマッチの2つを紹介する。とりわけ飼育下の野生動物を対象にした臨床医学では,EEAとの不適合は,飼育下個体で好発する種特有の病気の病態理解のうえで重要である。胃炎症候群は,飼育下の鯨類では高率にみられる病気の1つである。 病因としては様々な要因があげられているが,はっきりとした病因は不明である。野生下の鯨類は,昼夜関係なく摂餌を行っているが,飼育下では人の活動時間の日中に集中して給餌を受ける。結果,野生下では生じにくい, 極端に長い空胃時間が日常的に繰り返され,その結果,胃炎が生じるという仮説を提唱したい。筆者の自験例では,この仮説を支持する結果を部分的に得ている。進化医学的な視点は,野生動物の臨床において,有益な洞察を与えるものと思われるが,安易な適用には批判的になり,常に対立仮説を意識すべきである。

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