著者
綾屋 紗月
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.74-86, 2020-04-30 (Released:2021-04-30)
参考文献数
10

筆者は2011 年以降,自閉スペクトラム症をもつ仲間と共に当事者研究会を継続する中で,当事者研究の具体的な進め方だけでなく,歴史や理念を明示化する必要性に迫られた.筆者は文献資料やインタビューを通じて当事者研究誕生の歴史的経緯を調べた.その結果,周縁化された当事者のニーズから,難病患者・障害者運動と,依存症自助グループという2 つの当事者活動が合流して,当事者研究が誕生したことを示した.さらに現代社会において,当事者活動から周縁化されがちな自閉スペクトラム症に関する筆者の当事者研究を分析した.その結果,筆者の当事者研究も,社会モデルや,傷ついた記憶の語り直しというかたちで,二大当事者活動の影響を受けていたことが確認された.以上を踏まえ,当事者研究の方法論を開発した.本研究は,研究史,具体的研究事例,方法論という1つの研究領域を特徴づける3 つの側面から当事者研究の全体像をとらえた初めての研究と言える.

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