著者
小林 憲正
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第50回大会
巻号頁・発行日
pp.21, 2007 (Released:2007-10-20)

生命の誕生に必要な有機物の生成の場としては原始惑星大気や星間環境が考えられる。特に,星間で生成した有機物は隕石や彗星により原始地球に届けられたと考えられ,その役割が注目されている。われわれは原始惑星や星間を模した環境下で,高エネルギー粒子線などの放射線による有機物の生成や変成について実験を行っている。隕石や彗星中にみられる有機物は,元来,分子雲中の星間塵中で生成したと考えられる。そのシミュレーションには,紫外線照射が使われることが多いが,宇宙線の効果が重要であると考えられる。そこで,(1)一酸化炭素・アンモニア・水(気相・固相)への陽子線照射,(2)メタノール・アンモニア・水(液相・固相)への重粒子線照射を行った。いずれの実験においても分子量数千の複雑な有機物が生成するが,その酸加水分解により種々のアミノ酸等を生じることがわかった。これは,宇宙線により高分子状の複雑な構造を有するアミノ酸前駆体がすでに生成していることが強く示唆される。この複雑有機物態のアミノ酸は,遊離アミノ酸と比べて放射線や熱に対して安定である。これらは,星間で紫外線や熱などによる変成を受けたと考えられる。模擬実験で生成した有機物の変成実験を行い,隕石中にみられる有機物との相関を調べる実験を計画中である。星間での有機物の生成や変成を調べるためには,実際の宇宙環境下での実験が有効と考えられる。現在,宇宙ステーション曝露部を用いた宇宙線や極端紫外光を用いた有機物の生成・変成実験や,惑星間塵の捕捉実験を計画中である。

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