著者
小林 憲正
出版者
日本宇宙生物科学会
雑誌
Biological Sciences in Space (ISSN:09149201)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.3-9, 2006 (Released:2006-09-06)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

A wide variety of experiments have been conducted to synthesize bioorganic compounds such as amino acids since Miller's historical discharge experiments in 1953. Amino acids were easily obtained from strongly reducing gas mixtures. Even if the primitive Earth atmosphere was less reducing, amino acid precursors could be formed by using high-energy radiations. Extraterrestrial organics were another plausible sources of amino acids, and were contained possible seeds of homochirality of bioorganic molecules. There have been controversies concerning the first catalytic molecules in primordial soup. Some of the hypotheses are reviewed, including the RNA world, the Fe-S world and the garbage-bag world.
著者
小林 憲正 遠西 寿子 坪井 大樹 酒井 貴博 金子 竹男 吉田 聡 高野 淑識 高橋 淳一
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.39-46, 2008-03-31

炭素質コンドライトや彗星中に種々の複雑有機物が検出されていることから,地球外有機物が生命の誕生に重要な役割を果たした可能性が議論されている.隕石・彗星中有機物の起源としては,分子雲中の星間塵アイスマントル中で宇宙線・紫外線エネルギーにより生成したとするモデルが提案されて いる.われわれは模擬星間物質に重粒子線を照射することにより高分子状の複雑有機物に結合したアミノ酸前駆体が生成することを見いだした.このような高分子状結合型アミノ酸は遊離アミノ酸と比較して宇宙環境で安定であること,円偏光照射によりアミノ酸エナンチオ過剰を生じうることなどが わかった.これらの知見をもとに生命の起源にいたる新たな化学進化シナリオを提案する.
著者
谷内 俊範 小林 憲正
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.113-118, 2007-06-20 (Released:2007-06-20)
参考文献数
24
被引用文献数
2

Titan is the largest satellite of Saturn, and has dense (ca. 1,500 hPa) atmosphere mainly composed of nitrogen and methane. In addition to various organic compounds, aerosol is found in the atmosphere. It is suggested that the aerosol was made of complex organic compounds, which was formed from Titan atmosphere by such energies as ultraviolet light, high-energy electrons (discharges) and cosmic rays. Voyager and Cassini missions partly revealed the nature of the aerosol. A wide variety of laboratory simulation experiments have been conducted by using a gas mixture of nitrogen and methane, and the resulting solid products are often referred as “Titan tholins”. The present paper reviews these observations and simulation experiments on the Titan aerosol, and discusses its relevance to origins of life.
著者
小林 憲正
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.94-99, 2011-06-25
被引用文献数
1

土星最大の衛星のタイタンは,窒素・メタンなどからなる濃厚な大気を有し,紫外線,土星磁気圏に捕捉された電子,宇宙線などのエネルギーにより多様な有機物ともやの生成が観測されている.カッシーニ=ホイヘンス探査により,タイタン表面に液体エタンなどからなる湖沼の存在が明らかとなり,また地下にアンモニア水が存在することが示唆された.また,種々の地上模擬実験により,模擬タイタン大気から炭化水素,ニトリル等の有機物や,高分子態有機物「ソーリン」が生成すること,ソーリンの加水分解によりアミノ酸の生成が報告されている.これらの有機物と,液体メタン・エタンもしくはアンモニア水との相互作用により生命の誕生の可能性も議論されている.次期の土星系探査におけるタイタンの有機物・生命探査の可能性について議論する.
著者
河合 純 癸生川 陽子 小林 憲正
出版者
生命の起原および進化学会
雑誌
Viva Origino (ISSN:09104003)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1, 2018 (Released:2021-11-16)
参考文献数
74

How to find life on extraterrestrial bodies? Firstly, we need to define what life is. Although there are a large number of definitions proposed by individual scientists, there are no definition that everyone agrees. If we would describe the characteristics that all the terrestrial organisms have, they would include the followings: 1) metabolisms, 2) reproductions, 3) boundaries and 4) Darwinian evolutions. The Earth-type life consist of DNA using 4 nucleic acid bases, proteins composed of basically 20 kinds of amino acids, and cell membrane mainly composed of phospholipids. However, it is not well known that how Earth-type life select these organic compounds. In this paper, first we will explain the organic compounds used by terrestrial organisms. We will then introduce the analytical methods of organic compounds used in the past planetary explorations, as well as in the ground laboratories. Finally we would like to introduce future astrobiology missions considered in Japan, together with analytical techniques that could be used in them.
著者
山岸 明彦 矢野 創 小林 憲正 横堀 伸一 橋本 博文 山下 雅道 田端 誠 河合 秀幸
出版者
生命の起原および進化学会
雑誌
Viva Origino (ISSN:09104003)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.72-76, 2008 (Released:2022-01-18)
参考文献数
23

たんぽぽ(蒲公英,dandelion)は綿毛のついた種子を風に乗せて頒布し,その生息域を広げる多年草である.我々は,この名前のもと,国際宇宙ステーション-JEM(日本実験棟)上での微生物と生命材料となり得る有機化合物の天体間の移動の可能性の検討と微小隕石の検出および解析実験を提案する.我々は,超低密度エアロゲルを用いることで,微小隕石やその他の微粒子を捕集することが可能であると考えている.低軌道上で超低密度エアロゲルを一定期間曝露することで宇宙空間で微粒子を捕集する.エアロゲル表面と衝突トラックの顕微観察の後,エアロゲルの様々な解析を行う.衝突トラックの詳細な検討により,国際宇宙ステーション周辺のデブリのサイズと速度が明らかにできると期待される.エアロゲル中に残存した粒子に関して,鉱物学的,有機化学的,及び微生物学的な検討を行う.一方,宇宙環境下での微生物の生存可能性について検討するため,微生物を直接宇宙空間に曝露する実験も行う.同様に,宇宙環境下での有機化合物の変性の可能性を検討するため,有機化合物の宇宙空間への直接曝露実験も行う.これらの実験を行うための装置はすべて受動的な装置であり,そのための装置の基本構造,装置回収後の解析法も,既に確立されている.
著者
小林 憲正
出版者
生命の起原および進化学会
雑誌
Viva Origino (ISSN:09104003)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.77-82, 2008 (Released:2022-01-18)
参考文献数
34

A great number of experiments have been done to examine possible prebiotic formation of bioorganic compounds such as amino acids in possible primitive environments. There are two scenario of prebiotic formation of bioorganic compounds: An endogenous formation scenario and an exogenous formation scenario. The latter scenario was supported by the facts that a wide variety of organic compounds were detected in meteorites and comets. It is now suggested that organic compounds in extraterrestrial bodies were originally formed in extremely cold environments such as in molecular clouds. Laboratory experiments showed that complex precursors of amino acids could be formed from simulated interstellar media by irradiation with high-energy particles. It was suggested that such extraterrestrial organic compounds were delivered mainly by cosmic dusts. We have, however, very limited information on organic compounds in cosmic dusts since they are captured within terrestrial environments. We proposed a novel astrobiology mission “Tanpopo” by utilizing the international space station. In the mission, cosmic dusts will be collected with ultra-low-density aerogel, and organic compounds in them will be analyzed. In the mission, organic compounds simulating extraterrestrial organics will be directly exposed to solar ultraviolet light and cosmic rays at the same time to study the fate of organic compounds in cosmic dusts near the Earth orbit.
著者
山岸 明彦 河口 優子 横堀 伸一 橋本 博文 矢野 創 今井 栄一 田端 誠 小林 憲正 三田 肇
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.173-179, 2018-06-05 (Released:2018-06-05)
参考文献数
27
被引用文献数
1

「たんぽぽ計画」では国際宇宙ステーション(ISS)曝露部で微生物を採集することによって,この高度での微生物の存在可能性を検討する.また,微生物が宇宙空間で,どの程度の時間生存できるのかを,微生物を宇宙環境に曝露することによって調べる.生命の起原以前に,宇宙空間で合成された有機物が宇宙塵とともに地球に飛来した可能性がある.そこで,ISS上で宇宙塵の採集を行い,有機物を解析する.地球周辺には,スペースデブリが多量に蓄積している.本計画ではそのモニターも行う.これらの実験のために0.01g/cm3という超低密度のエアロゲルを開発した.これは今後の宇宙における様々な高速衝突微粒子採集に利用可能である.曝露試料は1年間,2年間,3年間曝露の後に地上に持ち帰り解析する.すでに,1年目と2年目の試料が地上に帰還して分析が行われている.1年間曝露した微生物の生存が確認された.
著者
小林 憲正
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第50回大会
巻号頁・発行日
pp.21, 2007 (Released:2007-10-20)

生命の誕生に必要な有機物の生成の場としては原始惑星大気や星間環境が考えられる。特に,星間で生成した有機物は隕石や彗星により原始地球に届けられたと考えられ,その役割が注目されている。われわれは原始惑星や星間を模した環境下で,高エネルギー粒子線などの放射線による有機物の生成や変成について実験を行っている。隕石や彗星中にみられる有機物は,元来,分子雲中の星間塵中で生成したと考えられる。そのシミュレーションには,紫外線照射が使われることが多いが,宇宙線の効果が重要であると考えられる。そこで,(1)一酸化炭素・アンモニア・水(気相・固相)への陽子線照射,(2)メタノール・アンモニア・水(液相・固相)への重粒子線照射を行った。いずれの実験においても分子量数千の複雑な有機物が生成するが,その酸加水分解により種々のアミノ酸等を生じることがわかった。これは,宇宙線により高分子状の複雑な構造を有するアミノ酸前駆体がすでに生成していることが強く示唆される。この複雑有機物態のアミノ酸は,遊離アミノ酸と比べて放射線や熱に対して安定である。これらは,星間で紫外線や熱などによる変成を受けたと考えられる。模擬実験で生成した有機物の変成実験を行い,隕石中にみられる有機物との相関を調べる実験を計画中である。星間での有機物の生成や変成を調べるためには,実際の宇宙環境下での実験が有効と考えられる。現在,宇宙ステーション曝露部を用いた宇宙線や極端紫外光を用いた有機物の生成・変成実験や,惑星間塵の捕捉実験を計画中である。
著者
小林 憲正 三田 肇 癸生川 陽子
出版者
横浜国立大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

従来の古典的な化学進化説では,小分子から少しずつ大きな分子が生成し,その後,機能が創出したと想定されてきた。本研究では,単純な分子の混合物に高エネルギー付与と急冷により微弱な化学機能をもつ多様な分子(がらくた分子)が一挙に生成し,その進化・選択により微弱な生命機能を有する分子群が生成するというシナリオ,「がらくたワールド説」の実験的検証を行う。一酸化炭素・アンモニアなどの模擬星間物質や模擬原始大気に粒子線を照射した時に生じた高分子態複雑分子(がらくた分子)の機能を調べ,それが種々の宇宙地球環境下で変成を受けた場合の機能の進化を調べる。
著者
山岸 明彦 三田 肇 田端 誠 小林 憲正 横堀 伸一 東出 真澄
出版者
東京薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

国際宇宙ステーションで実施した曝露実験試料および超高速微粒子捕集実験試料の解析を行い、生命の起源に関する二つの仮説を検証する結果を得た。エアロゲルの表面に0.1mm以上の衝突痕を合計200個以上発見した。捕集粒子および曝露パネルの分析から以下の結果を得た。1.微生物密度の上限を決定した。2.曝露微生物生存率を推定し、宇宙での死滅が指数関数的であることを確認した。3. 複雑態アミノ酸前駆体がヒダントインのような単純な前駆体よりも安定であることを確認した。4. 捕集超高速衝突粒子の無機鉱物分析を行い宇宙塵を確認した。 5. 世界最高性能エアロゲルを実証した。 6. 微小デブリの衝突頻度を得た。
著者
緒方 雄一朗 薮田 ひかる 中嶋 悟 奥平 恭子 森脇 太郎 池本 夕佳 長谷川 直 田端 誠 横堀 伸一 今井 栄一 橋本 博文 三田 肇 小林 憲正 矢野 創 山下 雅道 山岸 明彦 たんぽぽ ワーキンググループ
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.175-175, 2011

始原小天体有機物は、太陽系および生命原材料物質の起源と進化を理解するための重要な情報を記録している。「たんぽぽ計画」では、大気圏突入時の熱変成や地上での汚染を受けていない宇宙塵を、国際宇宙ステーション上に超低密度シリカエアロゲルを設置して回収を試みる予定である。しかし、この方法では、宇宙塵のエアロゲルへの衝突により変成する可能性を考慮する必要がある。そこで本研究では、宇宙科学研究所・スペースプラズマ実験施設の二段式高速ガス銃を用いて、隕石微粒子の高速衝突模擬実験を行い、マーチソン隕石微粒子をシリカエアロゲルに撃ち込んだものを取り出し、2枚のアルミ板にはさみハンドプレスして圧着された隕石微粒子を、片方のアルミ板に載せた状態で、赤外顕微分光装置と顕微ラマン分光装置で測定を行った。また、SPring-8, BL43IRの高輝度赤外顕微分光装置IFS120HRでイメージング測定を行い、衝突前後の隕石有機物の分子構造の変化を見出すことを目的とした。
著者
金子 竹男 小林 憲正 矢守 章
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会秋季講演会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.69-69, 2003

炭素質隕石からアミノ酸、核酸塩基を含む生体有機化合物が検出されていることから原始地球への有機物質の多くが地球圏外起源であったとする可能性が示唆されている。しかし、地球外有機物の地球への持ち込み時の安定性が問題である。これまで彗星や隕石による有機物の地球への持ち込み時の反応を調べる為に衝突実験(_から_2km/s)、アミノ酸の加熱分解実験およびシリカを共存させたアミノ酸の昇華実験が行なわれてきた。しかし、より速い速度での衝突実験は余り行なわれていない。我々は世界最速である宇宙研の電磁加速装置「レールガン」を用い高速衝突実験を行なっている。今回はグリシン水溶液および彗星を模擬したメタノール、アンモニア、水の混合物に高速衝突させた生成物について検討した。<BR>10mM グリシン溶液はステンレス製ホルダーに、また彗星を模擬したアンモニア、メタノール、水の混合物は金メッキしたステンレス製ホルダーに封入し、ドライアイスで冷却後、液体窒素で冷却しながらこれにポリカーボネート製の飛翔体を衝突させた。衝突速度は2.5_-_6.4 km/sであった。生成物の一部を6 M HCl, 110℃で24時間加水分解し、陽イオン交換樹脂で脱塩後、アミノ酸をN-アセチル-L-システインとo-フタルアルデヒドでポストカラム誘導体化する島津LC-6Aアミノ酸分析計で同定・定量した。またアミノ酸の重合物は加水分解前の試料を0.45μmのメンブランフィルターでろ過後、イオンペアクロマトグフィーおよびMALDI_-_TOF MSにより分析した。<BR>グリシンを用いた実験では、加水分解前にはグリシン重合物のピークは観測されなかったが、ジケトピペラジンの生成が示唆された。衝突速度の違いによる生成物の差は見られなかった。海底熱水系を模擬したフローリアクター実験から、グリシンの重合物およびジケトピペラジンの生成が報告されている。イオンペアHPLCの結果から、衝突による高温・高圧状態では、フローリアクター実験で報告されている通常の重合物と異なる物が生成していると考えられる。MALDI-TOF MSの結果からは、2環アミジンの生成が示唆された。これは耐熱性があり、衝突でも残存し、加水分解することでアミノ酸になることが分かった。<SUP>1)</SUP><BR>メタノール、アンモニア、水の混合物を用いた衝突実験では、生成物を加水分解することにより、セリン、グリシンなど多種のアミノ酸が生成することが分かった。<BR>高速衝突でグリシンから海底熱水系模擬実験や昇華実験とは異なる2環状アミジンの生成が示唆され、アミノ酸の一部は重合物を生成することにより衝突による分解を免れることが示唆された。彗星を模擬したメタノール、アンモニア、水の混合物から種々のアミノ酸が生成したことから、彗星の高速衝突によりアミノ酸前駆体が生成する可能性も示された。今後、模擬星間物質を用いた衝突実験を行ない、原始地球への地球圏外起源有機物質の持ち込みについて考察していく予定である。<BR>1)金子竹男、小林憲正、矢守章、スペース・プラズマ研究会平成14年度、79-82 (2003).
著者
大谷 栄治 倉本 圭 今村 剛 寺田 直樹 渡部 重十 荒川 政彦 伊藤 孝士 圦本 尚義 渡部 潤一 木村 淳 高橋 幸弘 中島 健介 中本 泰史 三好 由純 小林 憲正 山岸 明彦 並木 則行 小林 直樹 出村 裕英 大槻 圭史
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.349-365, 2011-12-25
被引用文献数
1

「月惑星探査の来たる10年」検討では第一段階で5つのパネルの各分野に於ける第一級の科学について議論した.そのとりまとめを報告する.地球型惑星固体探査パネルでは,月惑星内部構造の解明,年代学・物質科学の展開による月惑星進化の解明,固体部分と結合した表層環境の変動性の解明,が挙げられた.地球型惑星大気・磁気圏探査パネルは複数学会に跨がる学際性を考慮して,提案内容に学会間で齟齬が生じないように現在も摺り合わせを進めている.本稿では主たる対象天体を火星にしぼって第一級の科学を論じる.小天体パネルでは始原的・より未分化な天体への段階的な探査と,発見段階から理解段階へ進むための同一小天体の再探査が提案された.木星型惑星・氷衛星・系外惑星パネルは広範な科学テーマの中から,木星の大気と磁気圏探査,氷衛星でのハビタブル環境の探査,系外惑星でも生命存在可能環境と生命兆候の発見について具体的な議論を行った.アストロバイオロジーパネルでは現実的な近未来の目標として火星生命探査を,長期的な目標として氷衛星・小天体生命探査を目指した観測装置開発が検討された.これらのまとめを元に「月惑星探査の来たる10年」検討は2011年7月より第二段階に移行し,ミッション提案・観測機器提案の応募を受け付けた.
著者
谷内 俊範 小林 憲正
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 = Journal of aerosol research (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.113-118, 2007-06-20
被引用文献数
1

Titan is the largest satellite of Saturn, and has dense (ca. 1,500 hPa) atmosphere mainly composed of nitrogen and methane. In addition to various organic compounds, aerosol is found in the atmosphere. It is suggested that the aerosol was made of complex organic compounds, which was formed from Titan atmosphere by such energies as ultraviolet light, high-energy electrons (discharges) and cosmic rays. Voyager and Cassini missions partly revealed the nature of the aerosol. A wide variety of laboratory simulation experiments have been conducted by using a gas mixture of nitrogen and methane, and the resulting solid products are often referred as "Titan tholins". The present paper reviews these observations and simulation experiments on the Titan aerosol, and discusses its relevance to origins of life.