著者
森兼 啓太 森澤 雄司 操 華子 姉崎 久敬
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.325-331, 2009 (Released:2009-12-10)
参考文献数
14
被引用文献数
14 5

末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)または従来の中心静脈カテーテル(CVC)を挿入された患者における,カテーテル関連血流感染(CR-BSI)などのカテーテル留置中合併症に関するデータを収集し比較した.8施設よりデータ収集を行い,PICCを挿入された患者群(以下PICC群)は277例,CVCを挿入された患者群(以下CVC群)は276例であった.CR-BSI発生率は,1000カテーテル日あたりPICC群で5.6, CVC群で7.0と,PICC群に低い傾向を認めた.CR-BSIのリスク分析では,カテーテルがPICCであることが感染リスク低下因子であった(オッズ比0.55, p=0.019).挿入時の合併症として,CVC群で気胸や動脈穿刺が生じた.それらはPICC群では生じなかったが,刺入部からの出血が多かった.留置中の合併症としてはPICC群に静脈炎が多く,CVC群では発熱または敗血症が多く見られた.得られたデータを元にした推計では,553人の患者群においてPICCとCVCを使用した場合のCR-BSI発生数はそれぞれ59件,98件と推定され,PICC使用により抗菌薬を約1600万円,入院日数をのべ約820日,削減させることができると推定された.PICCとCVCの使用およびCR-BSIを含めた合併症を多施設のデータにより明らかにすることができ,PICCのCVCに対する有用性が示唆された.

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