- 著者
-
操 華子
- 出版者
- Japanese Society for Infection Prevention and Control
- 雑誌
- 日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.1, pp.1-11, 2014
本稿から疫学・統計学の基礎知識に関する連載が開始する.質の高い,エビデンスに基づいた感染制御活動を展開するためには,エビデンスとなりうる研究を実施する者(研究者),発表された研究論文を読み,臨床実践へその結果を適応させていく者(実践者),そして,星の数ほど発表される研究成果を実践家が使いやすい形に作り替え,世に発表する者(ガイドライン作成者)の3者がバランスよく機能することが必要である.この3者,いずれもがその機能を十分果たすためには,疫学と統計学の知識が求められる.<br> 質の高い研究成果を得るためには,質の高いデータを得る必要がある.その質の高いデータを得るためには,データの収集前に,「何を明らかにしたいのか?」,「どのように明らかにしていくのか?」ということをしっかりと決める必要がある.つまり,リサーチクエスチョン(research question,研究課題,研究上の問いとも呼ばれる)を明確にすることが質の高い研究成果を得るための第1歩である.このリサーチクエスチョンへの回答を得るために,適切な研究デザイン,研究方法を選択する.<br> 本稿では,感染制御の領域で頻用される研究デザインについて概説する.具体的な研究デザインについて述べる前に,研究のプロセス,リサーチクエスチョンの重要性,その種類,明確化したリサーチクエスチョンから適切な研究デザインを選択する方法についても説明する.<br>