著者
川崎 雅俊 安部 豊 恩田 裕一
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 水文・水資源学会2017年度研究発表会
巻号頁・発行日
pp.99, 2017 (Released:2017-12-01)

強間伐が流出に及ぼす影響を評価する為、隣接する2つの小流域を用いて強間伐の有無による流域比較試験を行った。その上で、林内雨量、表面流量の強間伐前後の変化も踏まえ、強間伐が流出に及ぼす影響発生メカニズムの考察を行った。その結果、強間伐施業を行った流域で総流出量が増加したが、その増分は渇水時に発生しており、豊水時の変動は僅かであった。渇水期に流量が増加した原因として、流域内貯留量、特に渇水時に安定的に水を供給する岩盤中の地下水の増加が推測される。そこで、岩盤地下水の地下水位とのよく相関する先行降雨指数(API)を用いて解析を行った。その結果、強間伐実施後、特に夏期の降雨シーズン後において、同じAPIでも流量が増加する傾向が見られた。この結果は、強間伐による林内雨量の増分が、貯留量、特に岩盤中の地下水貯留量の増加に寄与したことを示していると考えられる。APIに対する岩盤地下水位や流出の応答特性は、地質によって異なることが知られている。本サイトで基底流出と良い相関がみられたAPIの半減期(10日)は、堆積岩サイトと比べて長く、この緩やかな降雨流出応答の特性が、強間伐による林内雨量増を渇水時の流量増に変換した可能性が考えられる。今後は、地質の異なる他流域の観測結果との比較を行い、強間伐による流況の平準化に必要な要素について、検討を試みる予定である

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