- 著者
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桐木 雅史
千種 雄一
一杉 正仁
黒須 明
徳留 省悟
- 出版者
- 日本衛生動物学会
- 雑誌
- 日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第63回日本衛生動物学会大会
- 巻号頁・発行日
- pp.67, 2011 (Released:2014-12-26)
法医解剖において遺体から採取された生物を同定し解析することで有用な情報が得られる場合があることが知られている。本学では、主として栃木県で発見された遺体を対象として法医解剖を実施している。2010年に実施された法医解剖228件のうち35件(15.4%)において、遺体から検出された昆虫が熱帯病寄生虫病室に持ち込まれた。概要をまとめ、考察を加えて報告する。 月別では1年を通して1~10件/月あり、8月をピークとして6~9月に多かった。虫種はハエ類が多く、35件中33件で幼虫が見られ、他の2件でも卵または蛹が確認された。ハエの種類としてはクロバエ科(Calliphoridae)が29件、ニクバエ科(Sarcophagidae)が14件で確認された。また、1月に発見された遺体からはチーズバエ科幼虫が検出された。 ハエ類以外に、甲虫類が5件で検出されている。カツオブシムシ類、シデムシ類がそれぞれ2件で見つかり、1件でゴミムシ類、ハサミムシ類、ヒラタムシ上科が見られた。 ヒラタムシ上科の幼虫は橈骨の骨髄腔内から検出された。この幼虫は形態からヒラタムシ上科の球角群に属することがわかった。このグループには動物死体の骨髄腔内に侵入することが報告されているケシキスイ科(Nitidulidae)が含まれる。演者らは寒冷期に発見された白骨死体の骨髄腔からチーズバエ科の幼虫を検出し、昨年の本学会で発表している。通常法医解剖において、生物の検索は体表に留まるが、本事例から骨の内部も法医昆虫学的な検索の対象となり得ることがあらためて示唆された。