著者
畔柳 三省 熊谷 哲雄 松尾 義裕 黒須 明 早乙女 敦子 長井 敏明 徳留 省悟
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.33, no.Supplement3, pp.3-12, 2001-11-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
19

1995年から1998年の4年間の東京都23区内の入浴中死亡例のうち剖検により死因を決定された例について疫学調査を実施し次の結果を得た.(1)対象は709件であり剖検率は23.5%である.(2)年齢分布は0歳から96歳であり,平均年齢は65.8±16.2歳である.(3)冬季に多く,夏季に少ない.(4)健康群は26.0%を,疾患群は63.2%を占める.(5)内因死は63.9%,外因死は33.0%を占める.(6)虚血性心疾患が37.8%,溺死が28.8%の順に多い.(7)60歳未満の比率が高い死因はくも膜下出血,急性アルコール中毒である.(8)浴槽・サウナでは虚血性心疾患の比率が高く,洗い場・シャワーでは脳動脈破綻の比率が高い.(9)約半数が飲酒入浴をしており,外因死ではその比率が高い.(10)各発生場所での飲酒していないものの比率はシャワー73%,洗い場72%,浴槽52%の順に高い.サウナでは17%である.(11)湯深と死因との間に関連はみられなかった.以上から飲酒入浴は止めたほうがよいと思われ,特にサウナでの飲酒入浴は禁止するのが望ましい.また,洗い場でのお湯の汲み出しは避けたほうがよいのかもしれず,静水圧と死因との関連はみられなかった.
著者
黒須 明 木戸 雅人 長井 敏明 徳留 省悟
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.38, no.Supplement3, pp.61-65, 2006-08-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
8

1953年から2003年までの50年間の東京23区内における自動車運転中の突然死629例(男性623例,女性6例)について東京都監察医務院の症例から抽出し検討を行った.年齢別では40歳未満99例(15.7%),40~64歳450例(71.5%),65歳以上80例(12.77%)であった.車種別では大型車が51例(8.1%),普通自動車が402例(63.9%),軽自動車が32例(5.1%),二輪車が47例(7.4%)であり,タクシーの率が高く135例(21.5%)を占めた. 死因別では心血管系が379例(60.3%),脳血管障害が200例(31.8)%であった.事故の有無については,構造物あるいは他車との衝突があった事故が169例(26.9%),無事故が460例(73.1%)であった.
著者
田中 正敏 徳留 省悟 大中 忠勝 藤井 幸雄
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.119-127, 1988-12-01 (Released:2010-10-13)
参考文献数
30

東京都監察医務院の記録による1978年より1982年までの5年間の凍死症例は83件であり, 検案数に対する割合は平均0.29%である.40, 50歳代の男子が多く, 浮浪者なども含め無職ないし職業不詳の場合が男子全体の80%以上を示している.発生は1, 2, 12月の3か月で全体の80%近くを占めている.ほとんどの症例は気温11℃以下において発生し, 屋外では気温0~5℃での発生が多い.酩酊状態の場合には, 屋外で気温15~19℃といった場合にも発生がみられる.症例の75%は屋外における発生であり, わけても酩酊し路上での発生が多い.剖検時の血中アルコール濃度は1.5~2.4mg/mlの中等度酩酊が多いが, 40, 50歳代では2.5mg/ml以上の強度酩酊の場合が多い.剖検時の臓器所見としてアルコールによるとみられる肝障害も多くみられた.ローレル指数も一般に小さく, 栄養状態の劣っている者が多く, 都市型低体温症の場合には低栄養とむすびつきやすい.
著者
一杉 正仁 安川 淳 五明 佐也香 槇 徹雄 徳留 省悟
出版者
一般社団法人 日本交通科学学会
雑誌
日本交通科学学会誌 (ISSN:21883874)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.3-8, 2011 (Released:2018-03-01)
参考文献数
15

1997年から2011年の14年間に獨協医科大学法医学講座で行われた四輪自動車運転者の法医解剖91例のうち、運転中の体調変化によって病死した33例(走行中病死群)および事故による外傷で死亡したが、原因が運転者の機能的変化によると推定される8例(外傷死群)を対象に、その特徴を調べた。いずれの群ともに、70%以上の運転者で何らかの既往疾患が認められ、高血圧、心・大血管疾患、糖尿病が多かった。事故による損傷の重症度では走行中病死群で平均ISSが4.7と低いが、外傷死群では37.0と有意に高かった。すべての身体部位のAIS値は外傷死群で高かったが、特に胸部の平均AIS値が4.1と著しく高く、頭頸部の2.0、四肢の1.8と続いた。交通事故死の約1割で運転者の体調変化が事故原因となっているため、まず、運転者の健康管理を厳格に行う必要がある。また、交通外傷と診断された患者の中には、事故原因が運転中の体調変化に起因する例が潜在的に含まれる。したがって、外傷患者に対しても、交通事故の原因として運転者の体調変化を念頭に置き、検索をすすめる必要があろう。
著者
横山 朋子 一杉 正仁 佐々木 忠昭 長井 敏明 今井 裕 徳留 省悟
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.107-111, 2005-09-19 (Released:2017-04-27)
参考文献数
9

獨協医科大学口腔外科で外科治療を必要とした未成年患者のうち、母親がエホバの信者であった3人を対象にインフォームド・コンセントの過程および治療経過を参考に、輸血の可否を決定する際の望ましい対応法について検討した。15歳と17歳の患者は本人の意思にもとづいて、それぞれ輸血を承諾した。また、9歳の患者は十分な判断能力があると思われ、本人および母親の希望で非観血的治療を行った。未成年者が意思決定を行う際に、親の影響を受けることは十分に考えられるが、本人の判断能力の有無を見極めるには、年齢のみでなく患者との十分なコミュニケーションにもとづいて慎重に行うことが重要である。未成年者においても、判断能力がある場合には本人の意思を尊重すべきである。また、判断能力が不十分な場合や患者の意思が確認できない場合には、保護者の意思を最大限に尊重しながら、倫理委員会や複数の医師の判断で輸血の可否を決定することが望ましいと思われた。
著者
畔柳 三省 熊谷 哲雄 松尾 義裕 長井 敏明 黒須 明 早乙女 敦子 徳留 省悟
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.20-29, 2001
被引用文献数
2

1976年から1995年までの20年間の東京都23区内の学生・生徒の急死例の疫学調査を実施した。総数は255件であり,年別,月別,発生時状況,学生・生徒別,性別,健康状態,死因,治療状況,受診状況について検討し次の結果を得た。学生・生徒の急死は年平均12.8件発生し経年変化はほぼ一定であり,8月に多い。学校管理下での発生は約3割であり,そのうちスポーツ中は約6割である。男女比はどの学生も2:1であり,どの学生の健康状態でも健康群(自分が健康であると確信しているもの)と疾患群(直接死因となりうる既往症を指摘されているもの)の比率は約1:1である。死因は急性心機能不全63件,気管支喘息34件,心筋炎22件の順に多い。健康群の比率が高い死因は,急性心機能不全,心筋炎,脳内出血,クモ膜下出血,消化管疾患である。心筋炎,消化管疾患,気管支喘息で療養中の比率が高く,虚血性心疾患でスポーツ中,肥大型心筋症で歩行中の比率が高い。来院時心肺停止が約6割,病院外死亡および救急入院・受診中死亡は各2割である。突然発症した例は117件(45.9%)であり,症状があったが容体急変まで医療機関にかからなかった例は60件(23.5%)である。症状があり医療機関を受診したが自宅で容体急変した例は37件(14.5%)であり,消化管疾患の60%および心筋炎の45.5%がこの経過である。学生・生徒の突然死を予防するうえで,最多を占める原因不明の急性心機能不全の突然死機序の解明が待たれ,心筋炎のように発症からある程度の経過があるものについては早期診断・適切な経過観察の方法の確立が求められる。
著者
一杉 正仁 木戸 雅人 川戸 仁 横山 朋子 黒須 明 長井 敏明 徳留 省悟
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.135-138, 2004-09-17 (Released:2017-04-27)
参考文献数
7

異状死体からの眼球摘出例をもとに、法的および倫理的問題を検討した。角膜移植実施のためには、眼球提供者の死体血を採取して、適応基準検査を実施することが必要となる。異状死体では、法医解剖終了後の採血が困難であるため、事前の血液採取が必要である。そのためには、死因究明の目的で採取した血液を使用するか、あるいは解剖時に採血をする必要がある。異状死体からの眼球摘出および諸検査をすみやかに行うために、本問題について幅広い理解が必要であり、かつ、司法当局、一般臨床医、異状死体の検案や解剖に携わる医師が密接に連絡を取り合うことが重要である。
著者
桐木 雅史 千種 雄一 一杉 正仁 黒須 明 徳留 省悟
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第63回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.67, 2011 (Released:2014-12-26)

法医解剖において遺体から採取された生物を同定し解析することで有用な情報が得られる場合があることが知られている。本学では、主として栃木県で発見された遺体を対象として法医解剖を実施している。2010年に実施された法医解剖228件のうち35件(15.4%)において、遺体から検出された昆虫が熱帯病寄生虫病室に持ち込まれた。概要をまとめ、考察を加えて報告する。 月別では1年を通して1~10件/月あり、8月をピークとして6~9月に多かった。虫種はハエ類が多く、35件中33件で幼虫が見られ、他の2件でも卵または蛹が確認された。ハエの種類としてはクロバエ科(Calliphoridae)が29件、ニクバエ科(Sarcophagidae)が14件で確認された。また、1月に発見された遺体からはチーズバエ科幼虫が検出された。 ハエ類以外に、甲虫類が5件で検出されている。カツオブシムシ類、シデムシ類がそれぞれ2件で見つかり、1件でゴミムシ類、ハサミムシ類、ヒラタムシ上科が見られた。 ヒラタムシ上科の幼虫は橈骨の骨髄腔内から検出された。この幼虫は形態からヒラタムシ上科の球角群に属することがわかった。このグループには動物死体の骨髄腔内に侵入することが報告されているケシキスイ科(Nitidulidae)が含まれる。演者らは寒冷期に発見された白骨死体の骨髄腔からチーズバエ科の幼虫を検出し、昨年の本学会で発表している。通常法医解剖において、生物の検索は体表に留まるが、本事例から骨の内部も法医昆虫学的な検索の対象となり得ることがあらためて示唆された。
著者
桐木 雅史 一杉 正仁 千種 雄一 黒須 明 徳留 省悟
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.115-119, 2010-06-15 (Released:2011-01-07)
参考文献数
28
被引用文献数
3 5

某年12月下旬に栃木県中部の山林内で白骨化した遺体が発見された.法医解剖において,右大腿骨の大腿骨頭内から数十匹の虫体を検出した.採取した虫体は活発に動き,しばしば跳躍した.本虫はチーズバエ科(Diptera: Piophilidae)の3齢幼虫と同定された.本科は広く世界に分布し,日本には5種が報告されている.幼虫は動物の腐肉などの動物性蛋白質を好む種が多く,動物の死骸や骨に発生することが観察されている.本虫の骨内への侵入経路としては脈管孔が考えられる.孔径1 mm以上の脈管孔も多数あり,本科の幼虫のみならず,微小な生物であれば容易に侵入できると考えられる.遺体から検出される生物を解析することで死後時間の推定などの有用な情報が得られることがある.本事例から,体表や軟部組織のみならず,骨の内部も法医昆虫学的な検索の対象となり得ることが示唆された.
著者
田中 正敏 徳留 省悟 大中 忠勝 藤井 幸雄
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.119-127, 1988

東京都監察医務院の記録による1978年より1982年までの5年間の凍死症例は83件であり, 検案数に対する割合は平均0.29%である.40, 50歳代の男子が多く, 浮浪者なども含め無職ないし職業不詳の場合が男子全体の80%以上を示している.<BR>発生は1, 2, 12月の3か月で全体の80%近くを占めている.ほとんどの症例は気温11℃以下において発生し, 屋外では気温0~5℃での発生が多い.酩酊状態の場合には, 屋外で気温15~19℃といった場合にも発生がみられる.症例の75%は屋外における発生であり, わけても酩酊し路上での発生が多い.<BR>剖検時の血中アルコール濃度は1.5~2.4mg/m<I>l</I>の中等度酩酊が多いが, 40, 50歳代では2.5mg/m<I>l</I>以上の強度酩酊の場合が多い.剖検時の臓器所見としてアルコールによるとみられる肝障害も多くみられた.ローレル指数も一般に小さく, 栄養状態の劣っている者が多く, 都市型低体温症の場合には低栄養とむすびつきやすい.