著者
野崎 千尋 アンドレアス ジマー 柴田 重信
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
日本臨床薬理学会学術総会抄録集 第43回日本臨床薬理学会学術総会 (ISSN:24365580)
巻号頁・発行日
pp.3-C-S31-2, 2022 (Released:2022-12-26)

カンナビノイドが、今、熱い。その「大麻(カンナビス)」という言葉の響きもあってか、あるいは大麻が持つという様々な難治性疾患への治療効果を期待するからか、現在世界中で大麻由来成分=カンナビノイドを使った様々な製品が爆発的に流行している。現在のところ、他の医薬品などと比べて「確実にカンナビノイドの方が優れている」という科学的根拠はほぼ無いにも関わらず、である。とはいえ確かにある種の疾病の病態を改善し、QOLを上げるということは、例えば患者自身の経験として世に語られていたりする。彼らは一様に「エンドカンナビノイドシステムが鍵だ」というが、さて、一方でエンドカンナビノイドシステムがどこまで理解されているかは、また別の話であろう。エンドカンナビノイドシステム、日本語では一般的に内因性カンナビノイド系と呼ばれて来たシグナル伝達系は、大麻の活性成分が特異的に結合する2つのGタンパク質(Gi/o)共役型受容体CB1とCB2受容体と、これらの受容体の各々に対応する内因性リガンド、そしてこれらリガンド軍の生成酵素や分解酵素などから構築されている。長年CB1は脳や中枢神経系に、CB2は末梢の免疫系細胞に発現していると考えられて来たが、実際のところどちらの受容体も、ある程度の偏りはあるものの、全身に極めて広範に分布しており、それぞれの発現箇所で代謝系・神経系・免疫系など実に様々な生理機能を調節していることが、最近の研究で解って来た。さてここで1つお伺いしたい。これだけあちこちに広範に発現し、様々な生理機能の制御・調節を担うカンナビノイド受容体だが、ではこれらの受容体が無くなってしまったら、我々の身体は一体どうなってしまうのだろうか。つまり内因性カンナビノイド系が無いと、我々の身体には何がおきるのだろうか。我々はこの普遍的な問いに答えるべく、受容体を欠損させた遺伝子改変動物を用いて様々な検討を行ってきた。本講演ではその中でもCB1受容体の欠損が「加齢」や「肥満」に及ぼす影響、またCB2受容体の欠損が「感染症」や「慢性疼痛」にどのような影響を及ぼすかを、我々の最近の知見も併せて紹介する。

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