著者
松井 広志
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.503-518, 2013-03-31 (Released:2014-03-31)
参考文献数
48

近年, デジタルメディアによるコンテンツ受容に関して, 「物質」の対概念としての「情報」そのものに近い消費のあり方が伺える. しかし, ポピュラーカルチャーの現場では, 物質的な「モノ」という形式での受容が依然として観察される. ここには「ポピュラーカルチャーにおけるモノをめぐる人々の活動」という論点が潜んでいる. 本稿の目的は, この受容の論理を多面的な視点から, しかも日常的な実感に即して読み解くことである. 本稿ではその動向の典型を, ポピュラーカルチャーのコンテンツを題材としたキャラクターグッズやフィギュア, 模型やモニュメントに見出し, これらを「モノとしてのポピュラーカルチャー」と理念的に定義したうえで, 3つの理論的枠組から捉えた.まず, 従来の主要な枠組であった消費社会論から「記号」としてのモノの消費について検討した. 次に, 空間的に存在するモノを捉える枠組として物質文化論に注目し, とくにモノ理論から「あるモノに固有の物質的な質感」を受容する側面を見出した. さらに, モノとしてのポピュラーカルチャーをめぐる時間的側面を, 集合的記憶論における「物的環境による記憶の想起」という枠組から捉えた. これらの総合的考察から浮かび上がった「モノとしてのポピュラーカルチャー」をめぐる人々の受容の論理は, 記号・物質・記憶のどれにも還元されず, 時間的・空間的に重層化した力学の総体であった.

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文化受容における記号と物質の揺らぎのなかでポピュラーカルチャーを見る視点として、以下の論文が参考になるかもしれません。物語消費とデータベース消費についても触れられています。松井広志「ポピュラーカルチャーにおけるモノ」『社会学評論』(2012) https://t.co/3pcMBM9kB9 #情報と文化

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