著者
園田 薫
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.91-108, 2019 (Released:2020-11-13)
参考文献数
32

日本企業で働く外国人が数年で離職してしまうのは,今なお残る日本的な雇用慣行に原因があると指摘されてきた.そうした既存研究では,外国人のキャリア選択を十分に検討していないだけでなく,日本企業で働く〈企業〉の選択と日本という場所で働く〈国家〉の選択が混同して扱われていた.そこで本稿では〈企業選択〉と〈国家選択〉という分析概念を用い,外国人が日本企業での就労を決定した主観的なキャリア選択の過程に着目することで,外国人の離職が生じる構造的要因について検討し,外国人の雇用をめぐる日本企業の現状と展望を産業社会学的に考察する.日本の大企業で働く新卒外国人へのインタビュー調査から,特に留学生において国家選択が企業選択に先立ち,日本企業で働く直接的な原因になっていることが明らかになった.そのなかにはさまざまな制約で日本以外の国で働く選択ができず,また日本企業以外で働く選択肢も失ったと感じ,「次善の策」として日本企業へ就職したと考えるものが多い.以上の結果は,日本企業と外国人の軋轢を生むのは日本企業の雇用慣行への不満や魅力の少なさではなく,必ずしも日本企業に関心のない外国人がキャリア選択の過程で日本企業への就職を選択しているためであるということを示唆する.外国人と日本企業の相互理解を深めつつ,意図せずとも日本の労働市場に留まる傾向がある留学生の企業とのマッチングを制度的に支えることが重要だと考えられる.

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