著者
黒田 英一
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.443-458, 1996-03-30 (Released:2010-01-29)
参考文献数
11

ピオリ, セーブルは『第二の産業分水嶺』において, 大量生産システムにかわる生産方式として「柔軟な専門化」を提唱してきた。本稿は, 日本の有名な精密機器メーカーのひとつであるキャノンをとりあげ, 同社の生産ネットワークの事例調査により, 「柔軟な専門化」の日本への敷衍化を試みている。キャノンの生産ネットワークには2つのタイプがみられる。まず, 試作品の生産ネットワークでは, 専門技術を持つ協力企業が, 大田, 品川に立地し, 試作品専業の企業を中心にゆるやかに結びつき, 新製品開発という共通の目標に向かって, キャノンの製品開発を支えている。次が, 量産品の生産ネットワークである。量産品を支える企業は, 地方に立地し, 高品質, 廉価, 短納期の部品を製造している。今回の事例調査から, 試作品の生産ネットワークにおいて, 「柔軟な専門化」の特徴が見いだせる結果となっている。しかも, 試作品を担う企業は量産品も製造しており, 現実には複雑で多面的な生産ネットワークを構成しているといえる。

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