21 0 0 0 OA コロナウイルス

著者
田口 文広
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.205-210, 2011-12-25 (Released:2013-04-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1 5

コロナウイルス(CoV)はアーテリウイルスと共にニドウイルス目に属するウイルスであり,ゲノムは約30 kb(+)鎖でエンベロープを持つRNAウイルスである.CoVの特徴は,mRNAの構造にあり,ゲノムRNA 3‘側から5‘側に違う長さで伸張する数本のmRNAから構成され,各々のmRNAの5‘末端にはゲノムRNA 5’末端に存在するリーダー配列を持つ.その構造から,mRNAは不連続のRNA合成によりできあがることは推測されるが,その機構については,現在も2つの仮説が存在し,いずれが正しいのか決定的な実験的証明はなされていない.ウイルス蛋白の翻訳は一般に各々のmRNAの5‘末端に存在するORFからのみ翻訳される.ゲノムRNA (mRNA-1) の5‘末端約20kbには2つのORF(1aと1bで802kDaをコードする)からなる.このORF間には,pseudoknot(Pn)と呼ばれる複雑な3次構造を持つ領域があり,そのため1a蛋白だけで翻訳が終止する場合と,Pnにより,1a + 1b融合蛋白が合成されるケースがある.1a + 1b蛋白は16個の調節蛋白に解裂され,プロテアーゼ,RNA polymeraseとして働く他に,細胞の蛋白合成を抑制するような蛋白も同定されている.基本的に,mRNA-2以下のものからは,構造蛋白が翻訳される.マウス肝炎ウイルス(MHV)では,mRNA-3, 5b, 6,7から,それぞれspike(S),envelope (E),integral membrane (M),necleoprotein (N)が翻訳される.合成されたM, E蛋白は小胞体からゴルジ装置に至る細胞内小腔に親和性を持ち,M蛋白にRNA-N複合体とS蛋白が結合し,小腔内に感染性粒子として出芽し,exocytosisで細胞外に放出される.最近,細胞外放出にも宿主のプロテアーゼが関与していることが報告されている.

言及状況

外部データベース (DOI)

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コロナ禍でまず読んだコロナウイルスの日本語の総説は、獣医分野のものだった。獣医ではBSEの制圧後もH5N1高病原性トリインフルエンザや口蹄疫など極めて深刻な感染症が立て続けに問題化していた。豚熱も終わっていない。 https://t.co/mO6RIvjY6V https://t.co/LyZIVzbo2k
全然関係ないが、なんとなくコロナウイルスの資料を見ていたら、ものすごく分かりやすい総説に遭遇した。2011年のものだけど、オープンアクセスで日本語で誰にでも読める。 学部?(高校生物?)くらいの基礎知識は必要だけど。 https://t.co/ne5bNybRTU
#コロナウィルス の自身も目を通したレビューを3つ紹介。 1つ目は古い(2011年)けど日本語で書かれています。僕は知りませんでしたが田口文広氏はSARS発生時に国立感染研究所の主任研究員で日本ではこの分野の第一人者であったようです。基本的なことが分かります。https://t.co/o4H5ms6pfp
https://t.co/L890FWUCG6 #WorksCited
・コロナウイルス(CoV)は、2003年SARS アウトブレーク以前、医学領域での研究は限られていた。 ・培養細胞が見つからなかったこと、ゲノムが巨大であるため reverse genetics の開発が遅れたことにより、他のウイルスと比べ、分子生物学的な解析はかなり遅れていた。 https://t.co/iyWBdBxzj5

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