- 著者
-
井上 智博
- 出版者
- 社団法人 可視化情報学会
- 雑誌
- 可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.137, pp.8-13, 2015 (Released:2016-04-01)
- 参考文献数
- 17
江戸時代以来,日本で広く親しまれている線香花火において,紙縒りの下端に形成された火球から火花(火弾)が飛び出し,遠方で二次的・三次的に破裂する.しかし,線香花火の美の本質である火弾の放出と破裂の機構はこれまで明らかにされてこなかった.本稿では,著者らが行った線香花火の研究のうち,高速度可視化計測事例の一部を紹介する.はじめに,高速度カメラを用いて,火球と火弾を詳細に可視化した.その結果,火球自身または表面の気泡が破裂することで生じる表面張力駆動流れによって,火弾が放出されることがわかった.次に,二色法を適用することで非定常温度分布を計測した.火球温度はK2SとK2CO3の融点で決まり,火弾最高温度はK2SO4の融点で決まることが明らかになった.また,火弾の破裂原因として,火弾構成物質の吸熱分解に伴うガス生成によって液滴微小爆発が起きる可能性が示された.