著者
横山 真男
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.35, no.136, pp.17-22, 2015 (Released:2016-01-01)
参考文献数
29

楽器の音色(Timbre)の良し悪しの議論はいまだに経験的であり主観的である.古今東西かかわらず「美しい音色とは何か」といった類の議論は永遠の課題のようであり,ややもすると解けない命題として熱心に取り組むこと自体がとうてい無謀な夢のようにも言われる感もある.それでも,これまでに多くの科学者はストラディヴァリの作品を至高のものとして様々な角度から彼のヴァイオリンを分析し,音色の美とは何かを説明しようと試みてきた. ヴァイオリン研究に関する重要な著書といえばHutchinsの論文集1)が有名であるが,その他にも多くの研究報告があるので,本稿では,「音楽と楽器の可視化」特集にあたり,特に筆者の経験や興味の対象として関連の強いヴァイオリンについて,近年の音色の可視化に関する主だった研究を紹介し,音響,構造,材料,奏法等の各分野を横断的に概観し,なるべく写真や図を引用して解説する.
著者
井波 真弓 岩崎 晴美 宮沢 賢治 土屋 宏之 斎藤 兆古 堀井 清之
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.24, no.Supplement1, pp.211-214, 2004-07-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
19

The movement of the feeling of love in The Utsusemi story, which is previous part of The tale of Genji, the oldest long roman in the world, is visualized by means of wavelet multi-resolution analysis. By visualizing the movement of the feeling of love, it is verified the feature of this story: Genji, the hero, is largely influenced by Utsusemi's attitude, the first woman in his love story after his marriage and she makes him to feel keenly the perplexity of adolescence and the lost. In the case of Genji, even Utsusemi refuses to meet him, his willing to meet her and his longing to her are still high in the first and second part but his unwilling to meet her rises and the highest in the third part. While Utsusemi's willing to meet him is remarkable in the first part, unwilling to meet him because of her situation rises in the second part but her longing rises and the highest in the third part.
著者
井波 真弓 齊藤 兆古 堀井 清之 細井 尚子 山縣 貴幸 藤澤 延行 村井 祐一 山田 美幸 熊谷 一郎
出版者
(社)可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.33, no.130, pp.11-21, 2013 (Released:2014-07-01)
参考文献数
29
被引用文献数
1

『源氏物語』は11世紀初頭に書かれた日本文学の最高傑作であるが,その作者や成立順序などに関していまだに多くの謎を秘めている.本稿では,『源氏物語』を対象として3つの可視化手法を適用し,それぞれの手法や得られる情報について解説する.1つ目は,ウェーブレット多重解像度解析を用いた解析であり,助動詞の「タ形」と「ル形」の変化から作品の語りの変化を可視化している.2つ目は,助動詞の統計解析のためのテキストマイニング法で,得られた助動詞の出現頻度を基に数量化理論Ⅲ類を用いた『源氏物語』の構成の特徴抽出を行っている.3つ目は,作品にとって重要なキーワードを用いた頻度分布のパターン解析によって,『源氏物語』の雅な世界を絵画的に可視化している.
著者
山西 陽子 市川 啓太
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.39, no.154, pp.8-13, 2019 (Released:2020-07-01)
参考文献数
15

本研究では,電界誘起気泡を用いた無針注射システムの開発を目的とし,試薬導入能力の評価と,導入能力向上のためのマイクロ気泡圧壊とそれに伴うマイクロジェットの可視化や対象zへの侵襲性評価を行った.気泡圧壊とそれに伴う衝撃波について高速度カメラとシュリーレン法による可視化を行い,現状のバブルインジェクターにおける試薬導入能力は深さ方向に400µm程度であることが確認された.このようなバブルメスをはじめとしたマイクロデバイスの開発が進むと,生物学や遺伝子工学の研究をさらに容易にし,医療現場だけでなく,薬の研究や動植物の品種改良などでも,大きな後押しになるのではないかと期待されている.マイクロナノという特異な空間では思いもよらない現象が起こることも多いため,エンジニアとしての常識にとらわれず,さまざまな現象に関心を持ちながら研究を進めていくことが,医用工学の進化に重要である.
著者
繁富(栗林) 香織
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.33, no.131, pp.29-34, 2013 (Released:2014-10-01)
参考文献数
16
被引用文献数
4 2

近年,折り紙の折畳み技術は,数学,情報科学,材料工学,構造工学,建築,デザインなどさまざまな分野において,「折紙工学- Origami Engineering」として,国内外で盛んに研究が行われるようになってきている.折り紙の折畳みには,大きく分けて2つの特長がある.i) 折ることで,簡単に1枚の基板(2次元形状)から立体(3次元形状)が作り出せること,ii) 立体的な形状をコンパクトに折畳み収納できることである.これらの特長を活かし,折り畳み技術の応用を目指した研究・開発も行われており,代表例としては,宇宙で使用するアンテナや太陽パネルのデザインへの応用である.本稿では,著者がこれまで行ってきた折紙工学の医療分野への応用研究に関して,動脈硬化で詰まった血管を広げたり,動脈瘤により弱った血管の破裂を防ぐ治療に用いられるステントグラフトという医療器具への応用と,細胞の立体構造の作製し,再生医療に応用する研究に関して紹介したいと思う.
著者
井上 智博
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.35, no.137, pp.8-13, 2015 (Released:2016-04-01)
参考文献数
17

江戸時代以来,日本で広く親しまれている線香花火において,紙縒りの下端に形成された火球から火花(火弾)が飛び出し,遠方で二次的・三次的に破裂する.しかし,線香花火の美の本質である火弾の放出と破裂の機構はこれまで明らかにされてこなかった.本稿では,著者らが行った線香花火の研究のうち,高速度可視化計測事例の一部を紹介する.はじめに,高速度カメラを用いて,火球と火弾を詳細に可視化した.その結果,火球自身または表面の気泡が破裂することで生じる表面張力駆動流れによって,火弾が放出されることがわかった.次に,二色法を適用することで非定常温度分布を計測した.火球温度はK2SとK2CO3の融点で決まり,火弾最高温度はK2SO4の融点で決まることが明らかになった.また,火弾の破裂原因として,火弾構成物質の吸熱分解に伴うガス生成によって液滴微小爆発が起きる可能性が示された.
著者
菅原 徹
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.34, no.133, pp.14-19, 2014 (Released:2015-04-01)
参考文献数
17
被引用文献数
3

コミュニケーションにおけるなにげない笑顔は情報の受発信のスピード,容量,親和性を一変させるほどのチカラがある.また,笑顔を随意的につくることにより,表情筋活動の生理的フィードバックがポジティブな感情を喚起することも報告されている.笑顔は多様性があり,本物の笑顔だけが精神的,身体的な健康上の恩恵につながる可能性は高い.一般的に好感を持たれる,喜びを感じることができる笑顔は「デュシェンヌスマイル」と呼ばれる.これとは対照的に,不自然な笑顔や社交辞令的ほほ笑みは「ノンデュシェンヌスマイル」と総称される.この二つの笑顔の違いについて,顔の何学的な特徴の分析から明らかにする.さらにそれぞれの笑顔の表情筋活動パターンを筋電図により明らかにする.その結果,デュシェンヌスマイルには黄金比が表れ,表情筋の収縮に特異なパターンがあることがわかった.人と人との関係性を深める笑顔について,分析を通して解説したい.
著者
吉野 大輔
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.34, no.133, pp.20-25, 2014 (Released:2015-04-01)
参考文献数
18

本論では,知覚心理学における錯視を数々の図形や研究例を挙げて紹介する.そして錯視と芸術の関係,錯視量と美的印象の判断値との関係性について検討した研究を取り上げる.我々は錯視量が段階的に変化するように図形の複雑さを操作し,それにともなう図形の美的印象を測定した.研究結果は、錯視量が多い図形では美的判断の値も高くなる事を示唆するものであった.また錯視量と美的判断値は、両方とも単純すぎず複雑すぎない図形でそれぞれの値が最大となるV字形の関数に従う事が明らかとなった.   美的判断と刺激要素が与える感覚印象を対応関係で一義的に捉えるのではなく,むしろ「全体としての図」のまとまり方が判断値に影響している事が示唆された.この事から錯視を規定する要因と美的判断値を同様の枠組みで捉える際には,刺激の要素がどのように最適な構造としてまとまりを構成するかという,知覚構造を考慮にいれて検討する必要があるだろう.
著者
諏訪 正樹
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.19, no.72, pp.13-18, 1999-01-05 (Released:2009-07-31)
参考文献数
23
被引用文献数
9 5
著者
永井 洋 黒野 泰隆
出版者
The Visualization Society of Japan
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.32, no.125, pp.14-19, 2012 (Released:2013-07-04)
参考文献数
11
被引用文献数
1

電波干渉計は、複数の開口アンテナで取得された電波をコヒーレントに干渉させることで、高い分解能を発揮する観測装置である。 1940年ごろから観測実験が始まり、その後1960年に入り、電波干渉計を使った開口合成技術によって、天体の画像を実際に取得することが実現された。現在、世界中の天文学者が夢を見た究極の電波干渉計「ALMA」が南米アンデスに建設されていて、 2011年から部分運用を開始している。これにより、天文学の新たなブレークスルーがもたらされると、多くの天文学者が期待を寄せている。本論文では、電波干渉計の開口合成による像合成技術の原理について紹介するとともに、特にALMAで用いられるこれまでの電波干渉計観測での弱点を克服するだめの新しい広領域の天体画像合成技術について紹介をする。
著者
小林 巌生
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.38, no.150, pp.24-27, 2018

<p>日本でも公共政策分野におけるデータ活用の重要性が叫ばれるなか、世界では「スマートシティ」に注目が集まっている。</p><p>いま、世界のスマートシティでは都市計画やマネージメントの分野にIoTによるセンサーデータやその分析、可視化技術を応用し始めている。世界で最も進んだスマートシティの一つであるバルセロナでは「都市OS」構想を掲げ、IoTプラットフォームを行政業務の効率化に使い始めているほか、シミュレーション技術を用いたアーバンプランニングの手法を取り入れている。本稿ではこれらバルセロナの事例を紹介する。</p>
著者
井上 大介
出版者
The Visualization Society of Japan
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.36, no.141, pp.27-31, 2016 (Released:2017-04-01)
参考文献数
3

インターネットの進歩と発展とともに,インターネットを経由したサイバー攻撃も日々大規模化と高度化を続けており,重大な社会問題となっている.情報通信研究機構(NICT)では,それらのサイバー攻撃を観測し,分析するための複合的なシステムとして,インシデント分析センタNICTERの開発を行ってきた.本稿では,サイバー攻撃対策を目的としたサイバーセキュリティ分野の可視化技術について,NICTERとそのスピンオフ技術を中心に紹介する.
著者
片山 俊明
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.40, no.156, pp.19-24, 2020

生命科学・医科学の分野では多数の公共データベースが公開されているが、ライフサイエンス統合データベースセンターではこれらを統合的に利用するための技術開発を進めており、セマンティック・ウェブ技術を使ったデータ統合を行ってきた。セマンティック・ウェブではデータがグラフ構造で繋がっているが、本稿ではそのデータモデルResource Description Framework (RDF)、検索のためのSPARQL Protocol and RDF Query Language (SPARQL)、SPARQL検索の結果をREST API化するSPARQListを概説し、RDF/SPARQLを用いて構築した統合ゲノムデータベースTogoGenomeとその可視化モジュールTogoStanzaを紹介する。さらに、汎用化したMetaStanzaによる任意のSPARQLの検索結果の可視化と、可視化の際に必要なd3spraql.jsによるデータの形式変換および、現在利用可能な生命科学・医科学分野のRDFデータセットについて解説した。