著者
秋田 博伸
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1203-1215, 1982-12-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
17
被引用文献数
12 1

抗生剤抗与による副現象は現在まだ避け難いものとして多くの問題も残しているが, その内, 腸内細菌叢の変動は臨床上よく遭遇するものである. 著者はこの変動を検討する為にIsolator内で, 同一飼料にて飼育した無菌マウスを使用し, 腸内細菌叢の主要構成菌, Gram陽性, 陰性, 嫌気性のうち4種を選択し, 下記の如く, 単一, 2種, 4種感染マウスを作成し, 従来Gram陰性菌に対して用いられたABPC, GMと現在, 尚開発の盛んなCephem系薬剤を筋肉内へ投与した時の腸内細菌叢の変動を検討した.(1) E.coli単一感染マウス(2) Ecoli, Lacto.2種感染マウス(3) E.coli, St.faecalis, Lacto, Bac.4種感染マウスその結果, 胆汁排泄の少ないといわれるGM, CETの投与例では, 菌の減少は認めなかった.ABPC投与例では単一感染マウスでE.coliに対するABPcのMlc値の上昇を投与2日目より全例に認め菌数の変動は認めなかったが, 2種, 4種感染マウスではMIC値の上昇は認めず, E.coli, Lacto.で菌数減少を認めた.CEZ投与例ではE.coliの著明な減少を認めたが, Bacは著明に減少する例と, 軽度減少する例とを認めた.St.faecalisの減少は認めなかった.CMZ, LMOX, CMX投与では, 投与3日目よりE.coli, Bac.の著明な減少を認め, CMX投与例ではLacto.も同時に著明に減少した.St.faecalisは菌の減少を認めなかった.以上の結果, 胆汁排泄が良く, 広域スペクトルを有する抗生剤を筋肉内投与すると, 感受性菌の減少, 耐性菌の残存という菌交代を惹起させる傾向を認めた.

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