- 著者
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吉川 徹
- 出版者
- 関西社会学会
- 雑誌
- フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, pp.92-101, 2002-05-25 (Released:2017-09-22)
現代階層論は、ジャーナリスティックには活況を呈しているようにみえる。しかし同時に様々な困難な課題を抱えていることも指摘される。本稿ではこの現状をふまえて、あらためて1955年以来のSSM調査研究を中核とする階層研究史を見直した。その結果、1980年以降の約20年は、戦後〜高度成長期という前時代と比較すると、十分な説明がなされないままで残されていることを指摘できる。そうであるからこそ、この空白の20年を埋めるものとして、原純輔と盛山和夫は「寛かさの中の不平等」という現代階層論の大きな指針を示しているのである。だがこの論調もなお、「戦後」という|日来の時代認識からは相変わらず自由ではない。それゆえにまた、時系列比較研究に特有の先行研究との分析の重複、新しい時代の特性(=現代社会論)の軽視が繰り返されるおそれがある。同時に現在の微細な階層差(豊かさの中の不平等)は、社会意識局面などに対する階層要因の影響力の弱まりをけじめとしたいくつかの課題を、階層研究のフロンティアにいる次世代の研究者に突きつける。