著者
平本 毅
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.148-160, 2011-06-30 (Released:2017-09-22)

本稿では、「フリ」により「オチ」が来ることを投射(予測可能に)し、会話の中に「面白さ」を適切に位置づける手続きを、会話分析により記述する。ユーモアに関する研究において、ユーモアはある概念と事象との間の不一致から生じる「ズレ」により生まれると考えられてきた。しかし実際の会話において参与者は、そのような「ズレ」をいつでも任意の位置で形成できるわけではない。参与者は、概念と事象を表す二つの言語的/パラ言語的/非言語的要素を組み合わせることにより、適切に「面白さ」を会話の中に位置づける手続きをふむ必要がある。本稿では、ハーヴェイ・サックス(1992)のいう「第一動詞」が、会話の中に「フリ」と聞かれうる(概念を表す)要素を置くことにより、その後に「オチ」(事象を表す要素)が来ることを投射し、それにより「面白さ」を適切に会話の中に位置づける手続きに用いられうることを主張する。具体的には、第一に「第一動詞」は、会話上の特定の位置に置かれたときにそれを「フリ」として認識可能である。第二に「第一動詞」は、それが含まれる発話ターンが、続く節や文(「オチ」)をもつものであることを投射する。第三に「第一動詞」は、「オチ」の内容を一定程度投射する。加えて「第一動詞」の利用において語り手は、「フリ」の部分で概念の「普通さ」を、「オチ」の部分で事象の「異常さ」を示し、それにより両者の「ズレ」を際立たせていることが論じられる。

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関西人が話にオチをつける現象について談話分析的手法を用いて論じたものはないかと探しているうちに、こんな論文が出てきた。 https://t.co/3X7UBL33Gn

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