著者
三浦 航太 北野 浩一
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.1-16, 2023 (Released:2023-01-31)
参考文献数
8

2022年9月4日に行われた新憲法案承認をめぐる国民投票の結果、1年にわたり制憲会議で作成されてきた新憲法案は否決された。本稿の目的は、なぜ新憲法案が否決されたのかを検討することにある。まず、制憲会議には市民社会組織での活動経験をもつ多様な関心テーマや政策提案をもつ議員が多数選出された。制憲会議では、そうした特徴をもつ議員たちによる個別の発議をもとに、議論が進められた。その結果、多民族国家の規定、上院の廃止、私的所有権の制限、社会保障、教育、ジェンダーといった社会変革をめざす各論点が、グランドデザインを欠いたまま浮上した。左派寄りの議員構成もあり、それほど合意形成を経ることなく、新憲法案に盛り込まれた。当初から新憲法制定に否定的な右派や保守的な層の国民の反対だけでなく、とくに多民族国家の規定に対する国民の懸念は大きく、政治的立場、価値観で中道に位置する国民の支持を大きく失い、国民投票での大差の否決に結び付いたと考えられる。

言及状況

外部データベース (DOI)

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チリの憲法改正論議です 非常に興味深いです 先住民の事とか水利権の事などは、南米らしい論点ですね チリの2022年新憲法案はなぜ国民投票で否決されたのか https://t.co/cmelinXhEs
下記資料に、去年否決された改憲案の詳細な分析が載ってますが、チリの左派がピノチェト時代に作られた現行憲法を嫌うあまり急進的すぎる改憲案に走ってるのが良く分かります… 新しい制憲議会選挙では、現行憲法の維持を望む右派の共和党が圧勝してくれたので本当に良かった https://t.co/P2SD9C25Xc
国民投票で否決された #チリ の2022年新憲法案に関する三浦研究員のミニ講座はこちらから視聴可能です。

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