著者
權 純鎬 恩藏 直人
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.86-96, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
12

ダイキン工業株式会社は90年以上を超える歴史の中で,優れた製品開発によって成長を遂げてきた。近年,同社は製品志向から顧客志向への転換を試み始め,空調設備のサブスクリプション・サービス「AaaS(エアアズアサービス)」で成果をあげつつある。AaaSは空調設備ではなく空気を提供するという発想であり,月額料金で空調設備の設置工事から最適な運用の提案,メインテナンス,アフターサービスに至るまで,快適な空気を安定的に供給するための一連のサービスである。顧客自身も気づかない潜在的なニーズに注目したダイキンは,既存のモノ売り発想では対応が困難であった課題をコト売り発想への転換によって解決を試みた。同サービスは空調の最適化を実現することでランニングコストを削減するなど,コストの面においても顧客にメリットをもたらしている。昨今のコモディティ化の深化に伴い,製品の機能や品質だけで競争優位性を保つことが困難になってきている中,ダイキン工業のAaaS事例は,製品志向から顧客志向に組織の軸足を移すことで,提供製品を変えることなく新しい価値を提供できることを示唆している。

言及状況

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ダイキン社が2016年から推進しているAaaS(Air as a Service)は、「製造業のサービス化」の好例と言える。「空調ではなく空気を提供する」という発想の転換によって、提供製品を変えることなく新しい価値の提案を可能にした。/https://t.co/keqvOjOVh0 #ブランドに関わる論文を読む

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