著者
權 純鎬 河股 久司 須田 孝徳
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.51-62, 2023-01-10 (Released:2023-01-10)
参考文献数
33

コード型モバイル決済サービス(以下,決済サービス)の普及とともに,各社によるポイント還元型のプロモーションが頻繁に行われている。そのため,ポイント獲得を目的とした短期的利用者が増えており,決済サービスの利用定着率の低さが課題となっている。本研究は決済サービス利用時におけるタッチ・インターフェースへの接触に注目し,コントロール感および心理的所有感の向上によって決済サービスの再利用意向を高められるかを検証する。2つの調査を実施した結果,画面への接触回数が増加する金額入力型の決済方法は(vs. 金額非入力型),決済サービスに対するコントロール感を高め,コントロール感の知覚は心理的所有感を高めることが示された。また,画面接触によって知覚された心理的所有感の向上は,決済サービスへの再利用意向を高めることが確認された。
著者
權 純鎬
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.66-74, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
44
被引用文献数
1

インターネット通販をはじめとする電子商取引市場の拡大に伴い,デジタル環境における新しい消費者の行動を理解することに実務的にも学術的にも高い関心が寄せられている。本稿では,このような新しい環境における(1)製品の所有形態の多様化,(2)電子媒体のインターフェースによる触覚経験の相違という2つの変化が消費者の購買行動に及ぼす影響に注目しており,これら2つの変化は製品への心理的所有感(psychological ownership)の醸成に関連していること,また心理的所有感の知覚は製品の評価を高めることが先行研究によって示されている。そして,今後の研究課題として「デジタル環境における心理的所有感理論の再検討」,「製品の所有形態の細分化」,「心理的所有感と製品評価の関係の精緻化」の3つの課題を提示した。
著者
權 純鎬 恩藏 直人
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.86-96, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
12

ダイキン工業株式会社は90年以上を超える歴史の中で,優れた製品開発によって成長を遂げてきた。近年,同社は製品志向から顧客志向への転換を試み始め,空調設備のサブスクリプション・サービス「AaaS(エアアズアサービス)」で成果をあげつつある。AaaSは空調設備ではなく空気を提供するという発想であり,月額料金で空調設備の設置工事から最適な運用の提案,メインテナンス,アフターサービスに至るまで,快適な空気を安定的に供給するための一連のサービスである。顧客自身も気づかない潜在的なニーズに注目したダイキンは,既存のモノ売り発想では対応が困難であった課題をコト売り発想への転換によって解決を試みた。同サービスは空調の最適化を実現することでランニングコストを削減するなど,コストの面においても顧客にメリットをもたらしている。昨今のコモディティ化の深化に伴い,製品の機能や品質だけで競争優位性を保つことが困難になってきている中,ダイキン工業のAaaS事例は,製品志向から顧客志向に組織の軸足を移すことで,提供製品を変えることなく新しい価値を提供できることを示唆している。