- 著者
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島本 奈央
- 出版者
- 国立大学法人 大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センター
- 雑誌
- 未来共創 (ISSN:24358010)
- 巻号頁・発行日
- vol.8, pp.253-274, 2021 (Released:2021-07-08)
2020年7月パレスチナ占領地に関する国連特別報告者S. マイケル・リンク氏によって、イスラエルによるパレスチナ占領地域への連座刑犯罪についての報告書が4年ぶりに提出され、連座刑を国際法上の戦争犯罪として考えようとする議論が波紋を広げている。連座刑を用いたイスラエルの組織的な占領統治は、ユダヤ人、パレスチナ人の非共生な状態をより深刻化させている。連座刑は現行法上国際刑事裁判所で戦争犯罪として裁くことはできないものの、地域的な国際刑事法廷では戦争犯罪として認められ始めている。
本稿では、私が携わった上記に関わる業務とフィールドワークの報告に加えて、それを基に国際人道法上の違反行為である、連座刑についての国際法的論点の現状整理を行う。本稿の目的は、連座刑を用いたパレスチナ占領政策の考察と、法的理論の欠缺の示唆にある。