著者
井上 瞳
出版者
国立大学法人 大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センター
雑誌
未来共創 (ISSN:24358010)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.31-63, 2021 (Released:2021-07-08)

本稿では、1980年代以降アメリカで展開された心的外傷後ストレス障害(PTSD)に関する言説を「トラウマのPTSDモデル」と定義する。そのうえで、このモデルの特徴を、トラウマ的出来事を経験した後も維持される自律した個人という近代的主体観を基盤とすることと規定した。このような主体観という視座から、性暴力被害と回復をめぐる日本の精神医学・心理学領域の研究を検討することで、これらの研究が、自身の情動や認知、行動をマネジメントする近代的主体観にもとづいていることを指摘した。最後に、現代の女性をとりまく社会状況である新自由主義とポストフェミニズムという文脈の中で、日本の精神医学・心理学領域における性暴力被害と回復をめぐる言説を分析した。その結果、「トラウマの PTSD モデル」は、個人の自律性に着目することで、性暴力被害者に回復の道を提示するが、現代社会においては、レジリエントな主体であることを是とする規範として作用するおそれがある点を指摘した。

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@miyukinatsu “同意がない性行為はすべて性的暴行に問える” スペイン 刑法改正の背景に何がhttps://t.co/xG0BeJa6X5 性暴力被害とトラウマを再考する 新自由主義とポストフェミニズムの観点からhttps://t.co/vne36CRF3X
性暴力被害とトラウマを再考する 新自由主義とポストフェミニズムの観点から https://t.co/81CkKfrHgy
https://t.co/3tY4LSNik5 トラウマ関係資料
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>性暴力被害にあったとしても、自分で自分の人生を決めることができる、人生を投げ出さなくてもいいというメッセージは、非常に重要である。ただ、性暴力被害からの回復をめぐるこれら言説が、現代社会において性暴力被害者に及ぼす影響については、慎重に考察する必要があるだhttps://t.co/n3mOQQj1Ue
流れてきたので読んでみたけど、主体であることを期待される権力がネオリベからも(ポスト)フェミニズムからも作用しているという指摘が興味深かった。 井上瞳「性暴力被害とトラウマを再考する」 https://t.co/DRmepy06j6
性暴力被害とトラウマを再考する https://t.co/BGoBD4FXpf 「新自由主義とポストフェミニズムの観点から」 https://t.co/1PLuiMyCwW
ちなみに一緒に載っている井上さんの論文もいいからこっちも読んでね! https://t.co/L9oJ13z2QQ

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