著者
井上 史雄 半沢 康
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-18, 2021-04-01 (Released:2021-10-01)
参考文献数
34

この稿では、方言語彙の構造と変化を扱い、その一般性・法則性を追究する。江戸時代の方言集『庄内浜荻』(1767)の採録語を全体として扱い、現代の残存率の変化、世代差を考察する。計量語彙論の手法により、使用頻度数、意味分野、地理的分布範囲などの変遷を手がかりに、相互の関係を見る。廃れた語は、意味分野として道具など昔の暮らしにかかわる語が多い。全国の方言分布を見ると、狭い地域でしか使われない語は衰退し、広い地域で使われる語、ことに東京の口語・俗語として使われる語は、生き残る。語彙変化の基盤には社会・文化の変化があり、外界が変わればことばも変わる。意味分野によって語の使用頻度数が変わる。これが全国分布の広さに影響し、残存率を支配する。コミュニケーション範囲の拡大により、狭い地域だけのことばは忘れられ、地域差が薄れる。『浜荻』成立以来の250年と、調査協力者の年齢差140年の語彙の変化が具体的に把握された。

言及状況

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本読んでたら「くちい」って形容詞が出てきて、知らなかったのでまず意味を調べて、ちょっと古い言葉なのかと思って「くちい 古語」などと適当に打ったら面白そうな論文がついでに見つかった。「方言語彙の構造と変化を扱い、その一般性・法則性を追究する」そうだ。 https://t.co/ooNg4xucoD
https://t.co/4iJMqMBUPX 公開されてた。「地域語の違いは、かつての地域差から年齢差へと変容した」。狭い地域だけの言葉が特に衰退しやすいのは大垣方言の研究でも言われてたな。ウ音便みたいに使用範囲の広い特徴でも平気で衰退しているものもあるけど。 https://t.co/DInKDoEI0o

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