著者
構 大樹
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.64-76, 2015 (Released:2016-08-02)

本稿では〈宮沢賢治〉において「雨ニモマケズ」が中心化された諸要因のひとつを、総動員体制下の文学場に着目することで、同時代的な文学的価値の再編という観点から考察した。『詩歌翼賛』第二輯と火野葦平「美しき地図」からは、「雨ニモマケズ」の価値が《私事性》《素人性》によって生じていたことが看取される。これらは当時、「素人の創作」の流行を受け、文学場の評価軸となったものであった。また「報告文学」をはじめとする文学ジャンルでは、「素人の創作」に文学者が到達できない価値さえ与えられていた。こうした文学場の動向によって、「雨ニモマケズ」は特権的な文学的価値を帯び、やがて総動員体制下で〈宮沢賢治〉が高く称揚されるという事態を生起させたと考えられる。

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構大樹「徴用された〈宮沢賢治〉――総動員体制下の「雨ニモマケズ」と文学的価値の所在―― 」 PDFあり。 https://t.co/wnnfT6K8oH

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